▼新聞記者になった二十数年前、仕事道具の一つとしてポケットベルを持たされた。出先でピーピー鳴ると不吉な予感がよぎる。「事件か事故か。それとも原稿の間違いか」。急いで公衆電話を探し、職場にかけた

▼1990年代半ばのポケベル全盛期、公衆電話も大活躍した。女子高校生が文字メッセージを送るため休み時間に長蛇の列をつくったり、酷使されたプッシュボタンが壊れたりといった珍事も。携帯電話の急伸に反比例して影が薄くなった

▼実際、公衆電話の台数は減っている。県内では90年代前半に約1万2千台あったが、現在はおよそ2500台。利用も少なく、総務省のおととしの全国調査で「過去1年間利用していない」と答えた人は74%に上った

▼使う機会がめっきり減ったとはいえ、強みは知っておきたい。災害時に携帯や固定電話よりつながりやすい点だ。東日本大震災が発生した日、首都圏では利用が前日の約15倍に増えたという

▼なじみの薄い子どもたちに使い方を知ってほしいと、県生涯学習センター少年科学館のNTT東日本コーナーには先月、公衆電話と災害用伝言ダイヤルの練習機が新設された。非常時の通信手段として覚えておけば心強い

▼列島各地で地震が頻発し、大雨による災害も心配な時季になる。万一の時に慌てないよう、普段の備えが必要だ。家族や友人らとの連絡方法も取り決めておきたい。