みどり市職員に寝具を手渡す小松さん(右)

 明治創業の老舗寝具店「富田屋ふとん店」(高崎市田町)が今月末で廃業し、100年を超える歴史に幕を下ろす。合成繊維布団の主流化やコロナ禍などが要因という。最後の社会貢献として17日、ウクライナ避難民5人の受け入れ先のみどり市職員に寝具一式を手渡した。家族らは「有終の美を飾れた」と感慨深そうに話した。

 同店によると、創業は明治時代の終わり頃。最盛期には高崎市中紺屋町の中央銀座商店街に支店を構えた。真綿の布団などを扱い、婚礼布団の受注も多かったという。真綿の布団は使い古しても職人が打ち返しすることで、長く使えることが利点。店主の井桁和江さん(95)の次女で、大学時代まで店を手伝っていた小松玲子さん(62)=宮城県大崎市=は「支店と本店の間に人があふれ、布団や枕一つ運ぶのも大変だった」と当時のにぎわいを振り返る。

 その後、世の中の主流が合成繊維製品に移るとともに真綿の布団受注は減り、職人も少しずつ減少。井桁さんの長男、光一郎さん(65)=千葉県印西市=は「使い捨ての時代に変わっていくのを感じた」と寂しそうに話した。

 近年は井桁さんと熟練の職人の2人で切り盛りしていたが、コロナ禍で売り上げが激減。さらに職人が今年初めに体調を崩し、今月急逝した。職人が体調を崩した頃に井桁さんと家族が話し合い、今月末での廃業を決めた。小松さんも「残念だが、仕方ない」と受け止める。

 ロシアによるウクライナ侵攻後、山本一太知事が避難民の受け入れを表明したことを受け、井桁さんと家族は「何もない状態で避難して、まず必要になるのは布団」との考えで一致。廃業を前に店に残った在庫を寄贈し、避難民に使ってもらおうと県に相談し、近くみどり市が受け入れる3世帯5人の避難民に贈ることが決まった。

 小松さんが17日、店を訪れたみどり市職員に敷布団や枕、羽毛の掛け布団、マットレスなど一式を手渡した。マスクやタオル、食器などの品も添えた。小松さんは「羽毛の良い布団をお渡しした。慣れない環境でもゆっくり休んでもらいたい。安住の地に群馬県を選んだ皆さんに渡すことができて感無量。廃業前に有終の美を飾れた」と話した。

 同市職員は車2台いっぱいに寝具などを詰め込み、「温かい気持ちがありがたい。(避難民に)必ずお渡しする」と感謝していた。