▼ギリシャ神話の最高神ゼウスは、都市の統治を巡って争う海の神ポセイドンと女神アテナに対し、提案する。「人々に最も役に立つ物を贈った者に支配権を認めよう」

▼ポセイドンは「戦で勝利を導く」と馬を与え、アテナは「闇夜を照らす明かりとなり、傷を癒やし、口にすれば香り高く貴重な食料となる」とオリーブの木を植えた。選ばれたのは後者。さまざまに使える万能さから知恵の詰まった贈り物だったのだろう

▼農業ベンチャーの三田英彦さんが、館林市をオリーブの産地にしようと取り組んでいる。使われなくなった田畑を利用して栽培し、搾油から製品化まで、産業として形にすることを目指す

▼邑楽館林産の酒造米100%の地酒造りに関わる中で、農家共通の悩みになっている耕作放棄地が気にかかった。手軽に育てられる作物を探し、目を付けたのがオリーブだ。国内では香川県が有名だが、日照時間や平均気温などの条件は館林周辺も適している

▼5年前に会社を興し、昨秋、初めて収穫した実でオイルを試作した。量産と販売に向けて今年、クラウドファンディングで資金を増強。ノウハウとともに苗木を農家に提供して転作を後押しするという

▼食用のほか、化粧品や飼料に加工でき、観賞用としても人気があるなど、用途の広さは女神アテナの言葉通り。知恵を引き出せば、社会を取り巻く課題解決にもつながっていく。