卵からかえって間もない蚕の幼虫「稚蚕」を健康な状態で育て、農家に送り出す飼育所の閉業が各地で相次いだことを受け、群馬県内唯一の施設となった小野稚蚕人工飼料育センター(富岡市相野田)が、関東一円の養蚕業を支える拠点として出荷先を拡大している。同センターで18日に積み出し作業が行われ、体長2センチほどに育った稚蚕が茨城、栃木、埼玉、千葉の各県に初出荷された。

 同センターは、JA甘楽富岡が運営している。生まれたばかりの幼虫は病気にかかりやすいことから、本県産の人工飼料を与えて無菌状態を保ち、生後10日過ぎに送り出すことで丈夫に成長し、品質の良い繭を作れるようになるという。

 かつて飼育施設は県内各地にあったが、蚕糸業の規模縮小に伴って閉業が続いてきた。昨秋まで茨城、栃木、千葉に稚蚕を出荷していた前橋市内の施設や、埼玉県内の施設の閉所を受け、同センターが関東の拠点となった。

 この日、同センターには県内の養蚕農家やJA関係者に加え、県外ナンバーの車が出入りした。本県オリジナル蚕品種などの幼虫が入った箱を車に載せると、それぞれの地元に戻っていった。今春1回目は、約3万匹入った箱を150個出荷し、このうち約40箱を県外業者に送り出した。

 同JAの茂木一博専務は「日本の絹産業をリードした世界遺産、富岡製糸場のお膝元としての責任もある。稚蚕飼育で関東の養蚕業を末永く支えていきたい」と話す。

 稚蚕の飼育受託料は1箱2万円という。技術指導や販路拡大で同センターに協力する県蚕糸園芸課は、受託量を増やすことが事業の継続と施設の維持に欠かせないなどと説明。「実績を重ね、長野県や山梨県にも(取扱先を)広げていってほしい」と期待している。