ニホンジカによるスギやヒノキの苗木食害、皮剝ぎ被害などを防ぐため、林野庁関東森林管理局は19日、群馬県昭和村糸之瀬の国有林で、県林業試験場が開発した金属製の囲い「単木柵(たんぼくさく)」を苗木の周りに設置し、その被害防止効果を明らかにする調査を開始した。2020年度の野生鳥獣による県内森林被害額は約2億3千万円に上り、うち6割弱をシカ被害が占める。同局は3年かけ、単木柵が苗木の成長に与える影響なども調べ、林業現場での実用化につなげたい考えだ。

 獣害防止には、広い範囲を囲う防護柵や動物の忌避剤散布、テープによる皮剝ぎ防止策などが利用されているが、積雪の影響、設置の手間、価格が高いといった課題がある。課題解決に向け、同試験場が単木柵の手法を開発。試験場で効果を確認してきたが、より広く、林業現場に近い国有林で実証することになった。

 苗木を1本ごとに保護する単木柵は、手作業でも作れるのが特徴。2人一組で縦1メートル、横2メートルの市販の金網を円柱状に曲げてバンドで3カ所固定する。下草を抑える防草シートと組み合わることで、下草刈りの回数削減も期待される。

 調査開始の同日、単木柵の現地検討会が開かれ、森林組合や行政の関係者ら約100人が円柱状の柵の作り方や設置法を体験した。

 検討会で同試験場上席研究員の坂庭浩之さんは、単木柵はフェンスを最小まで小さくしたものだと説明。飛び地に植えられた苗木に対しても有効で、単独使用でも被害防止に役立つが、防護柵など他の手法と組み合わせることが効果的などとした。

 実証地は、スギの苗木4万3千本が今月植えられた区域2.47ヘクタールの一部に設けた。本年度は6月から4回程度、苗木の根付き具合や枯死などを確認する。シカの生息状況をセンサーカメラで捉え、苗木の成長部位の食害を監視する。

 利根沼田森林管理署の中村昌有吉(まさゆき)署長は「単木柵の効果が実証できれば、全国に普及していきたい」と話した。

 県林政課によると、県内民有林の森林被害で、シカによる被害額は20年度が約1億3600万円に上り、深刻な状況が続いている。