本県の多文化共生施策が大きな転換点を迎えています。昨年4月に「群馬県多文化共生・共創推進条例」が施行され、今年3月には同条例を具体的に進めるため、推進基本計画が策定されました。

 この動きを私は大いに歓迎したいと思います。特に、本県のこれまでの多文化共生施策に新しく加えられた理念であり、実践目標でもある「共創」には大きな可能性を感じます。なぜならそれは、日本人と外国人とが対等な関係を築きながら、地域社会において新たな価値を創造する試みであるからです。

 この施策の目玉の一つである「多文化共創カンパニー認証制度」も具体的で有意義であると考えます。認証のための評価では、外国人が役職に就いているか、外国人のためのキャリア形成支援が行われているかなどがチェックされます。評価項目には、外国人による地域活動への参加促進策の有無を問うものもあります。つまりは自社だけでなく、地域のことまで考えて行動していないと共創カンパニーとして認証されないのです。

 厳しいと思う人もいるかもしれませんが、私は率直に良い試みだと感じました。共創社会は企業だけでなく、地域と共に実現すべきものだからです。

 なお、この認証制度への昨年度の申請件数は32件で、全ての基準をクリアし、認証されたのは5社のみでした。県の本気度が伝わってくる結果だと思います。

 一方、「共創」に注力し過ぎて、以前からの課題でもあった「共生」がないがしろになってはいけないと考えます。共創カンパニーのような企業で力を発揮できるのは、県内で暮らす6万人規模の外国人の中でも数%ではないでしょうか。8~9割の方々の中には、コロナ禍の影響もあり、厳しい状況に直面している人も多いと推測します。

 研究者仲間と行ったセミナーでも、コロナ禍で解雇されたり勤務時間が減ったりして経済的困窮に陥った方や、子どもの教育に大きな不安を感じた方がいることが分かりました。私たちが捉えた現状はおそらく氷山の一角であって、水面下には顕在化していない問題群があるのだと思います。

 共生社会の実現のためには、外国人に対してだけでなく、日本人向けの取り組みにも力を注ぐ必要があると言えます。共生・共創に関わる県のアンケートでは、7割以上の外国人が「日本人と積極的に交流したい」と望む一方、それを求める日本人は1割ほどでした。外国人との関わりを「特に深めなくともよい」と答えた人はその数を上回り、1.5割ほどでした。

 皆さん、この結果をどのように受け止めますか。私は、多文化共生とはつまるところ「対外国人」というより、まずは「日本人自身」が多様性にどう向き合うかを問うものなのだ、と考えました。

 【略歴】専門は国際協力学。外務省研究調査員などを経て2016年、前橋国際大に着任。著書に「群馬で学ぶ多文化共生」。福島県出身。東京大大学院博士課程修了。