ブラジル料理店の店長と歓談する中山さん(右)

 「ボアタールジェ(こんにちは)」。人口の5人に1人は外国人という大泉町。昼食時を過ぎて、同町観光協会事務局長の中山正樹さん(36)はブラジル料理店を訪れた。店長とポルトガル語で元気にあいさつを交わすと、動画投稿サイト「ユーチューブ」の飲食店紹介への出演交渉を始めた。

 協会は2010年からイベント「活(い)きな世界のグルメ横丁」を開催。春から秋にかけて月1回、10カ国の25店舗が自慢の料理でもてなす。サンバやキッズダンスのステージもあり、来場者約3千人が盛り上がる。だが、新型コロナウイルス感染拡大によって20年3月、中止に追い込まれた。「早く再開したいと思って各所に働きかけているが、どうしても密になるのが避けられず、めどが立たない」。歯がゆい思いは消えない。

 そんな中で始めたのが交流サイト(SNS)での発信だった。慣れない撮影と編集に事務局員2人とゼロから取り組み、これまでに協会員の70店舗の動画を公開した。

 「グルメ横丁」のユーチューブ版として「食レポ」にも挑戦。「大食い対決」「激辛対決」といった企画も考えた。「イベントができないなら、自分に何ができるのかを常に考えてきた。とにかく集客に苦しむ店舗の力になりたかった」

 大阪市生まれの中山さんは高校卒業後、鉄道車両の整備に携わった。25歳の時に参加した同窓会で海外志向の仲間から刺激を受け、「積み上げてきた物を一度捨てて自分も行こう」と米国に留学。語学学校で知り合ったブラジル人とすっかり意気投合し、現地も訪ねた。

 ブラジルと関わる仕事を求めてたどり着いたのが日本屈指のブラジルタウン。29歳で大泉町観光協会に就職した。「全く縁のない土地に来たが、大泉は誰でも受け入れてくれる懐の深さがあってすぐになじめた」とほほ笑む。

 町内の飲食店などを巡る観光ツアーは「グルメ横丁」と並ぶ大きなイベント。19年度は個人や研究目的の大学生らが参加して37回実施できたが、新型コロナの影響で20年度は3回、21年度は8回と激減した。本年度も6月にようやく4件の予約が入ったところだ。

 試行錯誤しながらも、中山さんには一つ、温めている夢がある。自らカメラを回し、「大泉のリアル」をテーマにしたドキュメンタリーを制作すること。「大好きな大泉だからこそ、ちゃんと記録しておきたい」