選挙戦で若者へのアピールの手段として、交流サイト(SNS)を積極的に活用する候補者が増えている。4月に群馬県内で行われた首長選では頻繁に発信する陣営もあったが、SNSの機能を安易に利用することで、音楽家ら著作者の権利を侵害しているとみられるケースも出ている。今夏に予定される参院選や、来春の県議選でも、各陣営が動画配信などに活用することが予想されるが、注意する必要がありそうだ。

 4月のある首長選に立候補した2陣営は共にSNSを活用し、政策や実績を、動画や写真などでアピールした。一方の陣営は写真共有アプリ「インスタグラム」の機能「リール(Reels)=ズーム=」を活用し、3月初旬から110本超の動画を制作。うち約90本のBGMに英国のバンド「クイーン」や韓国のグループ「BTS」、本県出身のバンド「バックナンバー」らの人気曲を許可なく使った。

 音楽の著作権を管理する日本音楽著作権協会(JASRAC、東京都渋谷区)によると、選挙運動での音楽利用は、演奏会などの一般的な利用とは異なるという。同協会は「(第三者から見て)音楽家や楽曲が特定の政党や候補者、政策を支持しているような利用をした際、著作権法上の著作者人格権の侵害に及ぶ可能性がある」と指摘する。

 人格や名誉に関わる部分を保護する著作者人格権は著作者だけが持つ権利。他人に譲渡できないため、著作者の許諾なく利用できる場合でも、選挙活動に利用する際は、作詞家や作曲家ら著作者に了解を得る必要がある。

 同協会は「著作者は多くの人に曲を聴いてもらいたいと考えているので、政治色が付くのを避けたい人もいる」とし、同意が得られないケースも多いとする。

 110本の動画を制作した陣営のSNS担当者は「(リールには)楽曲を選んでアップロードできる機能があったので利用した。選挙運動には、あらためて著作者の同意が必要とは知らなかった。(楽曲の削除など)すぐに対応したい」とした。

 【リール】2020年に発表されたインスタグラムの機能で最大60秒のBGM付きの動画を制作できる。インスタグラムはJASRACと利用許諾契約を結んでいるため、一般利用者は利用許諾手続きをしなくても用意された楽曲を好きに選んで、動画などと一緒にアップロードできる。