至仏山頂から望む尾瀬ケ原。バックカントリーを楽しむ人々でにぎわっていた

 

 

 平野部では夏を思わせる陽気になっても、山を覆う雪はまだ深い。尾瀬国立公園の西端、標高2228メートルの至仏山。大型連休中の4月30日、その頂にたどり着くと、雪山登山やバックカントリーを楽しむ人たちでにぎわっていた。

 春の淡い青空に包まれた白い山肌。表面に刻まれた幾筋もの曲線は、バックカントリーに訪れたスノーボーダーとスキーヤーが描いたもの。次々と滑り下りる姿は、流れ星のようにあっという間に遠ざかる。

滑り降りるスキーヤーがあっという間に遠ざかっていく

 至仏山の入山は植生保護の観点から規制がかけられ、残雪期に立ち入ることができるのは例年2週間ほど。この日、片品山岳ガイド協会長の館山美和さんに鳩待峠から小至仏山、至仏山頂までのルートを案内してもらった。

 午前6時45分、鳩待峠からスノーシューを履いて出発した。入山期間が限られているとあって、鳩待峠の駐車場は早くも満車。登山道は、至仏山に向かう人たちで、活気づいていた。

出発地点の鳩待峠
枝を広げるダケカンバ

 気温はマイナス5度。前日も雪が降ったのだろうか。クマザサには薄く雪が積もっている。歩き始めのルートは広葉樹の林。幹が薄だいだい色のダケカンバが、枝を空に伸びやかに広げている。

 

 

 

 

 途中、木々に赤いリボンが結ばれているのに気付く。雪に覆われてしまう登山道で、遭難防止のために館山さんら片品山岳ガイド協会の会員が毎年結んでいるそうだ。雪面に立って取り付けるため、前年のリボンが残っていれば、結ぶ位置によって積雪状況を比較できるという。

 初め薄曇りだった空は、次第に晴れ、白く滑らかな山肌を持つ至仏の山容が見えた。「至仏山の斜面に木が生えない理由、分かりますか?」と館山さん。答えに窮していると、「木の育ちにくい蛇紋岩の地質だから」と教えてくれた。

ハイマツと蛇紋岩の稜線

 特殊な地質だからこそ、夏にはホソバヒナウスユキソウなどの希少な高山植物が生育するという。可憐(かれん)な花々に彩られる至仏山も美しいに違いない。

 オヤマ沢田代からは樹林帯が終わり、遮るものがない。降り注ぐ日光は雪に乱反射してまぶしい。慌ててサングラスを装着する。