小至仏山の手前から、登山道には茶色い蛇紋岩が露出する場所があり、スノーシューを外して歩く必要があった。今年の積雪は多いが、強風で稜線(りょうせん)の雪が飛ばされてしまったそうだ。

 確かに、西から絶えず強い風が吹いている。風は稜線を境に山の景観も二分する。振り返って小至仏山と笠ケ岳を眺めると、風の吹き付ける西側斜面はハイマツ帯で黒っぽく、東側は雪が吹きだまって一面が白い。

 約4時間かけてたどりついた山頂は、周囲のパノラマを堪能する多くの登山者でにぎわっていた。

ぐんまちゃんのかぶり物でポーズ。至仏山頂に楽しそうな声が響いた

     中には、「ぐんまちゃん」のそろいの帽子でポーズを取る人たちも。グループの中心は県内在住の男性で、登山の先々で声をかけ、知り合った仲間だという。楽しそうな声が響いた。

 「笠ケ岳、武尊山、日光白根山に栃木県の男体山、福島県の燧ケ岳(ひうちがたけ)、新潟県境の景鶴山(けいづるやま)…。今日は富士山も見えますね」。館山さんが、白い峰々をぐるりと指さした。

武尊山をバックに小至仏山付近の尾根を登る登山者

 麓に広がるのは尾瀬ケ原。雪原を蛇行する濃紺の筋は、真っ先に雪解けを迎えた川だった。「この至仏の雪解け水も、尾瀬ケ原に注ぎ込むんですよ」

芽吹き始めた木々

 下山は同じルートを引き返す。樹林帯では、ビロード状の毛に包まれた木の芽がほどけ始めていた。尾瀬が長い冬から目覚めを迎えていた。

 

 

 

 
【メモ】鳩待峠に至る車道の冬期閉鎖解除は4月下旬。高山植物の植生保護のため、至仏山は大型連休後から6月末まで入山が規制される。山内は重点植生保護区域や危険区域といった立ち入り禁止エリアがあり、登山道入り口で地図を入手できる。