航空機は燃費向上に対する強い要求に応える形で軽量化が進められてきており、FRP(炭素繊維などで強化したプラスチック)の適用が拡大している。最新鋭の機体では50%以上の材料が従来のアルミ合金からFRPに代替されている。エンジンも機体同様、燃費向上に向けたFRPの適用による軽量化が進む。

 IHIエアロスペースは宇宙用途向けの開発を通してFRP材料とその製造技術に強みがあり、培った技術を航空機エンジン部品に適用し、ステークホルダーの高評価を得て一定の事業規模を確立した。

 FRP製品の適用拡大は喜ばしい一方、脱炭素化という壁が立ちはだかるのは一般プラスチック製品と同様である。FRPは前述の通り製品の軽量化と、それに伴う航空機体の軽量化による燃費向上で二酸化炭素(CO2)削減に大きく貢献する材料ではあるが、部品製造時に大型の設備とそれを稼働するための多くの電力を必要とする。

 また、使用済みのFRP製品は破砕もしくは焼却により廃棄されるのがほとんどで、環境負荷が低いとは言い難い。素材から製品の製造に際してはエネルギー消費が少なく、製品としてはエンジンの燃費低減に有効で、廃却する際もリサイクルが可能な材料、製造方法の実現が課題となっている。

 航空分野のCO2排出量は運輸部門全体の約12%を占める。船舶とほぼ同等で、鉄道の約4倍だ。欧州では航空輸送は大量にCO2を排出する非効率な輸送方法として鉄道での代替を推奨するにとどまらず、短距離の移動手段としては法的に禁止する動きなども見られる。

 これに対して国際航空運送協会は、2050年時点での排出量を05年比で半減させるという厳しい目標を設定した。目標達成には前述の材料革新だけでは困難で、例えば液体水素を燃料とし、燃料電池や水素ガスタービンと組み合わせることでCO2排出ゼロの全く新しい「エコ」な電動航空機とするなどの抜本的対策が必要である。

 従来、民間航空機の安全運航管理は実質的に欧米がルールを定めてきた。近い将来の航空機の形態が変わる、すなわちルールが変わろうとする今こそ、定められたルールを守って製品を提供するだけでなく、ルールを定めることに日本も参加できないだろうか。そのためには保有する技術レベルと実績をしっかりと示すことが重要で、知恵の絞りどころだ。

 民間企業の努力と、国の施策、大学・研究機関の総力を挙げて国として取り組む時期にある。革新的将来宇宙輸送システムとして期待されている高速2地点間輸送の開発にも総力を挙げた取り組みが必要だ。国産の航空機開発が型式証明取得に苦戦し開発中断に至ったという苦い経験を決して繰り返してはならない。

 【略歴】現IHIに宇宙航空事業を譲渡する前の日産自動車に入社し、IHIに移籍。同社宇宙開発事業推進部長を経て2021年6月から現職。東京大工学部卒。

2022/5/24掲載