群馬県民なら誰もが知っている「上毛かるた」。生みの親は、長野原町出身で二松学舎大学の理事長・学長を務めた浦野匡彦(故人)である。

 生家跡は当館のすぐ西隣、墓地は国道145号を挟んだ町指定史跡「御塚」にある。当館には浦野の母校である長野原町立第一小学校旧校舎の一部が八ツ場ダム建設に伴う水没地区から移築され、町の誇りである浦野や上毛かるた、小学校の教材、教具、町内の民俗を展示している。

 第2次世界大戦後、連合国軍総司令部(GHQ)は学校で歴史や地理、道徳を教えることを禁止した。そうした中、浦野は安中市出身の牧師、須田清基からかるたを通して楽しく地域の歴史・文化を教えることを提案され、郷土を誇りに思えるようなものを作ることを決意した。県民から読み札を公募し、1947年、上毛かるたを完成させた。

 上毛かるたは県民が熱く語れる郷土の誇りである。なぜ県民の誇りなのか。それは、多くの県民が家庭や学校、各種大会を通じて親しみ、読み札を暗記するほどよく知っているからである。知らない物のことを誇れるはずがない。

 それでは、他の歴史や文化、自然、特産物などの価値は県民にどのくらい浸透しているだろうか。群馬に誇りを持ち、謙遜せずに県内外に胸を張って熱く語ることができる県民を増やすにはどうすればよいだろうか。

 その第一歩は、群馬や地域をよく知ることから始まると考える。そのためには県や市町村、学校などが人材育成に関わるさまざまな場面で「ふるさとに誇りを持てる人材の育成」のために力を合わせることが大切である。

 県・市町村、教育委員会は総合計画や教育振興計画などを策定している。各校も教育目標を定めている。その最上位目標に「ふるさとに誇りを持つ人材の育成」を掲げているところはいくつあるだろう。

 県教委が策定した教育振興基本計画の基本目標は「たくましく生きる力をはぐくむ 自らの可能性を高め、互いに認め合い、共に支え合う」である。私も策定会議に参加していた。原案への意見聴取もあったのに、どうしてあの時「ふるさとに誇りを持ち、たくましく生きる力をはぐくむ」とするよう提案しなかったのか、大いに悔やんでいる。

 魅力発信は県外や国外に向けて行われがちである。しかし、それと同時に「ふるさとに誇りを持つ県民」の育成をさまざまな場面で目標に掲げ、県内に対してこれまで以上に本県の魅力を発信することが大切ではないだろうか。

 多くの県民が、本県のさまざまな魅力や価値を「上毛かるた」のようによく知ることが重要だ。それが、「ふるさとに誇りを持つ」県民をもっと増やし、群馬や地域のことを発信しよう、ふるさとのために頑張ろうという郷土愛あふれる人を増やすことにつながっていくと考える。

 【略歴】県内小中学校勤務後、県立歴史博物館学芸員など25年にわたり文化財分野に携わる。元県文化財保護課長。2021年4月から現職。国学院大史学科卒。

2022/5/27掲載