▼人口約5400人の長野原町には2人の副町長がいる。1人は八ツ場ダム関連事業を所管するダム担当副町長。職員や町民に「ダム副」の通称で呼ばれるが、町外の人には何のことやらだ

▼他県にダム専任の助役がいることを知った当時の田村守町長が1990年に置いたダム担当助役が始まり。以来32年間で6人が任に就いた

▼一般的に副市長や副町長は県、市町村の幹部職員や官僚経験者が起用される。住民との接点は首長に比べてそう多くないが、ダム副は別。水没地区の住民の声を聞いて国や県に届ける役割があったからだ

▼住民の生活再建など、ダム事業をつかさどったこの役職は今月末で廃止となる。2014年から務めた最後のダム副、佐藤修二郎さん(63)は、ある町議に言われた言葉が印象に残っているという。「あなたには責任がある。辞めた後も。そしてわれわれにも責任があるんだ」。一瞬驚いたが「覚悟が伝わってきた」

▼多くの関係者の努力と協力、場合によっては我慢があって計画から68年をかけてダムは完成した。新型コロナ下で2年間見送られてきた完成記念式典があす開催され、地元にとっては区切りとなる

▼ダム完成でできた「八ツ場あがつま湖」は風の穏やかな日に水鏡のように風景を映す。川原湯地区の住民は、その瞬間を楽しみにしているという。満水のダム湖に緑の山が映え、八ツ場は美しい季節を迎えた。