片品村に移り住み、31年が過ぎました。気付けば還暦間近。時代の流れとともに地域も移り変わってきました。

 当時の村の人口は約6800人と記憶しています。スキーブームやバブルで、スキー産業を主とする村は活気に満ちあふれていました。しかし現在、人口は4千人を切り、45軒ほどあった地域の組合加盟宿も半分になってしまいました。祭りや伝統行事も減りました。2016年の小学校4校の統廃合に伴って各地域での運動会や行事がなくなり、スポーツ少年団や育成会なども縮小、世代を超えた交流の機会は次第に少なくなっていきました。

 学びの環境としては、学校が統合され子どもたちが多くの友達と学校生活を送れることは良いことだと思います。半面、学校や地域で人と人との関わりが薄れてしまったことはとても寂しいことだと感じています。中山間地域ではやむを得ないことなのかもしれません。しかし、この状況が続くとこの先どうなってしまうのか、という不安がよぎります。

 一人ができることは限られているけれど、誰かが何かに気付いて動くことで、小さな歯車の動きがいつか大きな歯車を回す、そんなことを実感する経験がありました。

 NPO法人を設立した16年のことです。小学校の統廃合に伴い、村で唯一残すことになった木造校舎について、村から管理委託を受けて交流拠点として活用することになりました。

 始めに取り組んだのが「武尊根さくら祭り」です。校舎は風光明媚(めいび)な場所に立ち、校庭を囲むサクラは4月下旬から見頃を迎えます。多くの人に見てほしいと、地域おこし協力隊を中心に開催しました。地元や出身者の方によるワークショップ、飲食ブース、子どもたちのダンスやバンド演奏などの催しも行い、村内外から500人ほどが訪れてくれました。

 次に、農林水産省の農泊事業の助成金を受け、校庭を活用したキャンプ場をスタートさせました。現在は帰郷したこの学校の卒業生が中心となって運営してくれています。平日の空き教室を活用したシニア向けの「いきいき体操教室」や木琴教室、機織り機を再生させた機織り教室などを地域の皆さんが自主的に開いています。

 甘楽町にあるNPOと連携した異文化交流や、村を舞台にした映像作品の撮影などの拠点としてたびたび利用され、多くの人に知ってもらう機会が増えました。過疎地となりつつある地域であっても、こうした場があることで、たくさんの人と出会い、交流し、さまざまな経験ができるのです。

 新たに建物を造らなくても、あるものを活用して今できることを探り、実行する。交流を生むためには、そんな取り組みも有効だと考えます。

 【略歴】1990年から片品村でペンションを経営。2008年にサッカー大会を企画する「アルモンテ」を起業。16年にNPOと「さんさん森のようちえん」を設立。

2022/5/28掲載