「発達障害者を取り巻く環境の整備が必要」と話す上原教授

 発達障害者を支える中で、家族や保育、教育関係者らが抱える悩みや葛藤は多い。状況を改善するには何が必要か。発達障害に詳しい共愛学園前橋国際大短期大学部の上原篤彦教授(62)に聞いた。

 ―保護者らの精神的な負担が大きい。

 親の会など同じ立場の人同士の集まりを活用し、悩みを打ち明けたり、相談し合ったりすることで精神的な負担を減らすことが大切。行政の相談窓口は親身になって対応し、当事者や保護者の「心のよりどころ」となってほしい。

 ―保育や教育の現場では、専門的な人材が足りていないのが実態だ。

 行政による保育現場の支援体制は構築されつつあるが、現場の需要にまだ追い付いていない。専門家がすぐに駆け付けて相談に応じられるような、より緊密で柔軟なフォロー体制が必要。特別支援学級では、自治体が投入する予算規模によって補助員の配置などが異なり、教員の負担に差が出ている可能性もある。全国的な課題だが、特別支援学級の担任が特別支援学校教諭免許状を保有している割合も低い。ただ、保有率の急激な上昇は望めないので、研修を充実させたり、専門のカウンセラーを配置したりするといった対応を検討した方がいい。

 ―医療機関を受診する当事者の初診待ち期間の長期化も課題だ。

 専門医を急激に増やすのは難しいと思う。早期支援につなげるため、受診前に療育や学習指導を始める「診断前支援」を推進してはどうか。医師の診断がなくても、発達の特性に応じた療育や教育はできる。

 ―療育事業者が急増する中で、提供する療育の質に差が出ているようだ。

 放課後等デイサービスはかなり増えたが、支援経験がないアルバイトの学生など、発達の特性が強い子への対応が分からず困惑する人もいる。的確な支援ができないと、利用者も戸惑ってしまう。一定レベルの療育を提供するためにも、スタッフの育成に力を入れるべきだ。

 ―発達障害者が暮らしやすい社会を実現するには何が必要か。

 周囲の環境整備が不可欠。私たちも彼らにとっての人的環境であることを認識し、個々に応じた適切な関わり方をすることが求められている。そのことを理解して、彼らとの時間を共有していけるといい。(おわり)

うえはら・あつひこ 1960年生まれ。群馬大卒。県内の学校現場で特別支援教育に携わり、県教委特別支援教育課長、県総合教育センター所長を経て2020年から現職。臨床発達心理士、公認心理師。専門は特別支援教育。