勾留された被告のうち、裁判所が一定条件下で勾留の執行を停止する「保釈」=ズーム=を認める割合(保釈率)が上昇している。前橋地裁管内(簡裁含む)の2020年の保釈率は25%で、20年前の7%の3倍以上になった。弁護士が無用な勾留を控える意識の定着と歓迎する一方、捜査側には被害者の不安を懸念する声もある。県外では保釈中の被告の逃亡や死亡で公判が開けない事例もあり、逃亡を防ぐ法改正の議論が進んでいる。

 司法統計によると、20年は同地裁管内で起訴後に勾留された683人のうち、171人に保釈が認められた。保釈率は00~09年に6~11%、10~16年に11~15%で推移していたが、17年以降は20%台となり、なおも上昇傾向にある。全国平均も00年以降は10%台だったが、14年に22%となり、19、20年は30%を超えた。

 群馬弁護士会刑事弁護センター運営委員長の土坂和也弁護士は「歓迎する。目指す所はもっと高くてよい」と語る。背景に保釈保証金の支援制度の拡大や弁護士の意識変化を挙げ、「身柄を取らずに捜査すべきだという原則が実践されつつある」と分析した。

 刑事訴訟制度は全体として真実発見と人権保障の間で調整と議論が続いていると指摘。保釈中の逃亡や自殺のリスクを完全に防ぐことは難しいと認めながらも、さらなる上昇に期待した。

 県内の捜査関係者は、事件の当事者間で生活圏が重なるケースを例に「保釈された瞬間から、被害者と家族は安心して生活できなくなる。その不安に対処できるのか」と心配する。裁判所が、個々の事件を細かく見極める姿勢を強く打ち出そうとしているのではないか、とも推測した。

 別の捜査関係者は「25%は率直に高く感じる」と評した。社会で暮らし続けることによる早期更生に一定の理解を示しつつ、「バランスは非常に難しい。保釈判断に最も影響するのは結局、世の中の空気かもしれない」とし、保釈率の上下に世論が与える影響を指摘した。

 県外では、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が保釈中の19年に海外へ逃亡。東京・渋谷のバス停で女性が殴り殺された事件では、傷害致死罪で起訴された男が保釈中の先月死亡し、自殺とみられている。いずれも裁判で罪の有無や適切な量刑を判断することが難しくなった。

 法務相の諮問機関である法制審議会は昨秋、保釈した被告の生活状況を出頭して報告させる制度や、逃亡を防ぐ義務を負う監督者の新設、不出頭罪の新設などを答申した。海外逃亡を念頭に、容易に外せない衛星利用測位システム(GPS)端末を被告に装着して空港や港湾に行くのを禁止する案も盛り込んだ。 

 保釈 裁判所が裁判への出頭義務を課すなどして、個別に定める保釈金を預けさせた上で被告を釈放する制度。重罪や前科、証拠隠滅や報復の恐れがある場合を除き、被告側が請求すれば、裁判所は検察官の意見を聴いた上で原則許可する。