降ひょうによって壊れた生徒用駐輪場の屋根=3日午前9時40分ごろ、藤岡北中
2日の降ひょうで枝ごと落とされたナシ=3日午前10時ごろ、高崎市中里見町
降ひょうによって割れた窓ガラスと、散らばった破片を片付ける教職員ら=3日午前9時ごろ、藤岡北中

 西毛地域で2日夕に降ったひょうにより、収穫目前の農作物が傷ついたり、建物の窓ガラスが割れたりするなど高崎、藤岡の両市を中心に甚大な被害が出ていることが3日、群馬県などのまとめで明らかになった。藤岡市では下校中の中高生89人が軽いけがを負ったほか、農業用ハウスの破損など被害額は1億4000万円に上る見込み。高崎市の特産品であるウメの出荷量は例年の3割程度に落ち込む見通し。県は5月末の降ひょう被害を含めて全容把握を急ぎ、今後は各市町村と連携して財政支援を検討する。

 県などによると、藤岡市ではひょうに当たった中高生89人のうち、少なくとも6人が病院で診察を受けたほか、60代と70代の男性2人が窓ガラスが割れて軽傷を負った。高崎、富岡両市でも下校中に自転車に乗っていた生徒が転倒するなどし、被害は3市で計93人に上った。

 幼稚園や小中高校などの教育施設では、高崎市12校、藤岡市12校、安中市2校で窓ガラスが割れたり、雨漏りが発生したりした。

 ゴルフボール大のひょうが降った藤岡市内では被害を受けた2校が3日、休校した。藤岡一小は窓ガラス約40枚が割れて2、3階の水が出なくなった。水道は復旧し、6日から安全に配慮しつつ授業を再開する方針。藤岡北中は窓ガラス約90枚が割れ、駐輪場の屋根が壊れた。復旧作業を見極め、同日再開できるか判断する。

 藤岡市によると、3日午後5時までに市民から364件の相談が寄せられた。市役所本庁舎の窓ガラスが割れ、庁用車60台も破損。農作物ではナシやブドウが傷つき、多くのビニールハウスに穴が開いた。JAたのふじは保険業務の対応に追われ、「こんなことは今までなかった」と話した。

 ウメの生産が盛んな高崎市の榛名、箕郷両地区を管内とするJAはぐくみによると、被害は全栽培面積の7割以上の約300ヘクタールに及ぶ。昨年産の出荷量は約1654トンで、今年は3割程度になる見込み。市は5月27日の降ひょうを含め被害を受けた販売農家に対し、1人当たり見舞金3万円を支給することを決めた。

 JA碓氷安中によると、安中市の磯部や原市、松井田地域を中心にズッキーニやナスが影響を受けた。出荷シーズンのズッキーニは約10軒で表面がえぐれるなどし、今シーズンの出荷を停止した農家もいるという。

 県は3日、藤岡市から要請を受け、備蓄していたブルーシート590枚を提供した。今後は県農漁業災害対策特別措置条例(県農災条例)を適用し、要件を満たした場合は肥料代や農薬散布、種苗購入の経費補助を検討している。傷ついた果実についてはJAなどと加工業者らに対して販売協力を依頼する。

 3日の記者会見で山本一太知事は「市町村や関係機関と連携して被害の全容を把握し、県として可能な限りの対応をしたい」と述べた。

上空と地表 気温差で氷塊

 前橋地方気象台によると、2日は関東地方の上空約5700メートルに平年より低いマイナス15度の寒気が流入した。一方、地表付近の最高気温は桐生と伊勢崎で30度以上を記録し、その温度差で大気の状態が不安定になったことが降ひょうの原因とみられる。

 地上と上空の気温差が大きくなるほど強い上昇気流が生じ、乱高下を繰り返すことで粒同士が合体するなどしてより大きな氷塊になることがあるという。

 同気象台によると、週末は穏やかな天気となるが、6日は広い範囲で雨となる見通し。梅雨入り前は大気の状態が不安定になることが多いとし、「周囲が急に暗くなったら落雷やひょうの可能性があるので屋内の安全な場所に避難してほしい」と呼びかけている。

「音怖い」「市場出せず」  ウメやナシが落下 建物、車ガラス損傷

 西毛地域を中心に多くの被害をもたらした降ひょうから一夜明け、被害地域の住民らが3日、当時の混乱を振り返った。下校中に多くの生徒が負傷した藤岡市内の中学校では「初めて見た」と驚きの声が上がり、収穫前の農作物が傷つき、丹精した果実が失われた農家は経営への打撃に肩を落とした。建物や車のガラスの損傷も相次ぎ、業者には修理依頼が相次いだ。

 下校中の生徒計87人がひょうに当たって打撲などの軽傷を負った藤岡東中と藤岡西中。風雨が強くなったため、屋内に避難したという西中3年の男子生徒2人は「ひょうを初めて見た。屋根から大きな音がして怖かった」と振り返る。

 東中3年の男子生徒3人もトンネルの中でやり過ごしたという。「驚いたが、早く帰りたい気持ちを抑えて冷静に行動できた」と話した。西中の荻原孝英校長は「自然災害でも子どもの安全を守れるよう、改めて日頃の対応を見直したい」と気を引き締めていた。

 「20年やってきた中でもまれな被害。市場に出せるのは1割あるかどうか」。高崎市中里見町の男性農家(64)は肩を落とす。例年約4トンのウメを出荷するが、収穫目前だった8~9割の実が傷ついたり地面に落ちたりした。樹皮がめくれており、「花芽が減ると来年の収穫量に影響する」と眉をひそめた。傷ついた部分は病気の恐れもあり、対処が必要になるとした。

 同町の星野雅彦さんの畑では、袋をかぶったナシが枝ごと落下していた。木を覆う網には3日も大量のひょうが解けずに残る。「こんなに大きなものは初めて見た」と驚いていた。

 田村果樹園(甘楽町)は藤岡市白石の畑で育てるキウイの枝が折れ、葉に穴が開いた。3日朝、畑を見回った田村英志代表(71)は「これから詳しく調べる。11月下旬の出荷に影響しないか」と心配していた。

 藤岡市森の自動車修理店「ワイルドボデー」には2日夜から、降ひょうで傷ついたなどとして100件以上の修理依頼があった。緊急性が高い約30件を引き受けたが、部品不足や完成の遅れが見込まれる。新井祐樹代表(49)は「先が見通せない」と頭を抱えた。同市中栗須の岸自動車商会では販売中の車が傷つき、成約済みの1台がキャンセルに。岸雅和社長は「残念」と悔やんだ。