双子の娘たちが5歳になりました。昨年からピアノを弾いています。生まれる前は未知の世界で不安の方が大きかったですが、今は成長を楽しめるようになりました。今回は子どもの頃の経験と音楽について述べます。

 私自身、「幼い頃からずっと長い時間ピアノを練習してきたんでしょう」と聞かれることがあります。好奇心旺盛だったのでピアノ以外にも楽しいことはたくさんあり、エジプトでピラミッド発掘などというテレビ番組は大好きでした。進路を選択する際も、「外国でピアノって面白そう」というくらいの感覚で海外へ行ってしまいました。

 興味を持つと最初はとことん追求し、やがて落ち着く(飽きる)という性格で、波がありながらもずっと面白かったのが音楽でした。本気でピアノに向き合ったのはそこから。子どもの時から世の中を見回して経験できたことや感じたことは、ピアノにだけ目を向けていたら知らなかったことでした。こうした体験は、生きる上でとても良かったと実感しています。

 先日、高崎芸術劇場でリサイタルを開きました。ピアノソロと歌曲の伴奏が半分ずつのプログラム。半分というのが難しく、それは鍵盤への指の触れ方が全く違うからです。

 ピアノの音はとても大きいので、伴奏の際はバランスを取るために本当に触れるだけくらいの感覚で弾きます。ソロになるとそのタッチに加え、体や腕の重さを使って演奏することになります。結果的にダイナミックな表現につながるのですが、この二つの演奏方法を曲によって変えるのがなかなか大変なのです。

 それに、演奏中はどう弾こうかということを考えている余裕はありません。頭の中のベストの状態は音楽に没頭すること。テクニカルなことなど、余計なことが頭をよぎるのはできる限り避けたいのです。

 音楽に没頭するというのは、それこそ舞台の上で自分をさらけ出すということです。音楽の成分は、今までの経験や生きてきた環境、考え方、その時の気持ちなどあらゆるものが含まれています。テクニックは別として、最終的にはそれに行き着くはずで、音楽の本質です。音楽に進路を決めたことや、ウィーン留学時に欧州の教会の建築や美術に興味を持っていろいろな国を訪れたこと、その後の数々のコンサートや教室の経営、そうしたことが全て要素となっていると思います。

 子どもの時には音楽に限らず、あらゆるものに興味を持ってほしいし、そしてそれがその後の人生の豊かさにつながると考えています。

 子どもたちには、音楽の楽しさはもちろん、運動の気持ち良さ、本の面白さ、一つの景色にもさまざまな見方があることなど、目いっぱい経験を積んで、豊かな人生を送ってほしいのです。

 【略歴】ソロ演奏会をはじめアンサンブル、伴奏、オーケストラとの協演など多岐にわたって活動する。元高崎演奏家協会長。前橋高卒。ウィーン市立音大首席卒。

2022/6/5掲載