▼家族の形は歳月とともに変化する。子どもが成長して独立したり、年老いた父母を見送ったり。夫婦2人になると、食卓が途端に寂しくなる。居間に響くのはテレビの音だけ。会話も少ない
▼〈おとなの 疲れた靴ばかりのならぶ玄関に/小さな靴は おいてある/花を飾るより ずっと明るい〉。高田敏子の詩の一節である。華やいだ玄関の様子が目に浮かぶ
▼大きな靴ばかりが並ぶわが家だが、最近玄関先がにぎわい、気持ちを明るくしてくれている。ツバメのひなが誕生し、子育ての真っ最中だからだ。昨年はカラスに襲われ、悲しみに暮れた。インターネットで調べると、同じ思いをした人が大勢いるようで対策がたくさん載っていた
▼情報を基に、巣の前に30センチ間隔でビニールひもをつり下げた。ツバメは通過できるが、カラスはひもが羽に当たるのを嫌がって近寄れないらしい。ときおり偵察に来るので心配だが、今のところ大丈夫である
▼本県では当たり前のようにツバメを見るが、数は減少しているという。餌となる昆虫が減り、西洋風の家が増えて巣を作りづらくなった。不衛生を理由に巣が撤去されてしまうことも多い
▼「ツバメが姿を消すということは、懐かしい日本の原風景が消えてしまうこと。生育環境の改善には時間が必要だが、私たち一人一人が優しく見守ることはできるはず」。日本野鳥の会が呼びかけている。