初めて見た映画のことを覚えていますか?

 私の一番古い記憶は、高崎東宝劇場で見たムツゴロウさんこと畑正憲監督の「子猫物語」です。ストーリーはおぼろげですが、劇場後方にすし詰め状態で立ち見したことは鮮明に覚えています。

 中学時代、友人3人と高崎電気館へ見に行った大林宣彦監督の「ふたり」は、後に高崎映画祭を知るきっかけとなった思い出深い作品となりました。上映後、ロビーで感想を言い合ったことも忘れられません。いつ、どこで、誰と見たか。そして映画を見た帰り道のことも含めて映画体験になるのだと実感します。

 現在は映画を見る手段も増え、時と場所を選ばずに多くの作品が見られるようになりました。動画配信も定着し、デジタルネーティブ世代は日常的に多くの映像に囲まれて生活しています。映画を見る選択肢は増えていますが、映画館で見る機会は減っているのではないでしょうか。当館でも10代の観客は年間で数十人ほどです。記憶に残る映画体験、映画館の場としての記憶が薄れていくのは残念なことです。

 昨年、「夏休みの映画館~忘れられない映画に出会う、夏。」と題し、10代の若者たちにミニシアターの存在を知ってもらい、訪れてもらうための取り組みを始めました。全国のミニシアターによる共同企画です。今年も7月下旬から1週間、高崎を含む全国7館で同時開催します。

 各館のスタッフたちが、10代に見せたい作品や当時見たかった作品を出し合い、若者向けに作られたものというよりも、自分たちが見て心動かされた作品を選定。多様な映画と出合う機会をつくっていきます。家での鑑賞では体験できない映画館の場としての魅力を伝えようと、活動弁士付きのサイレント映画の上映や、オンラインで全国の映画館をつなぎ、上映作品にゆかりのあるゲストのトークイベントや地元のアーティストによるワークショップも行いながら、より深く楽しめる工夫を凝らしていきます。

 期間中は日替わりで7作品を上映。さらに映画に合わせたイベントを開くことは、地方の小さな映画館単独では採算が取れません。全国の映画館と共同開催すること、そして文化庁によるコロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業の補助金を受けることで、実現可能となりました。

 この機会に、なかなか足を運ぶことのなかった地域のミニシアターで、いつもは選ばない映画に触れ、新しい世界を知るきっかけになればと願っています。

 映画を見て「よく分からなかった」というのも一つの体験です。映画も多様なら、見た人の感じ方もそれぞれです。数十年後に同じ映画を見て面白いと感じるかもしれません。それは映画を見る醍醐味(だいごみ)です。

 【略歴】大学卒業後の2001年に高崎映画祭のスタッフになったのをきっかけに、04年のミニシアター「シネマテークたかさき」開設時から副支配人。14年から現職。

2022/6/8掲載