ニホンジカによる食害が拡大する嬬恋キャベツを守ろうと、群馬県は地元の嬬恋村や、シカの越冬先となっている長野県と連携し、広域捕獲に乗り出す。本年度は同村で捕まえた4頭に衛星利用測位システム(GPS)の発信機を付けて移動経路や餌場を調べ、センサーカメラ計80台を設置した生息密度調査などを行う。長野県の調査結果と合わせて年度内に広域捕獲計画を作り、データに基づいた効率的な捕獲で被害軽減を目指す。

 県技術支援課によると、2020~21年度に同村に生息するシカ計4頭にGPSを取り付けた結果、冬の前に標高の低い長野県内に南下し、春になると再び戻ってくることが分かった。本年度はさらに4頭にGPSを付け、新たな移動経路や餌場の分析を進める。

 捕獲頭数の目標を設定するため、シカが群れを成して生息している4カ所にセンサーカメラ計80台を設置。個体数が多い場所は重点的に捕獲する。これらを踏まえ、わなを仕掛けるのに適した場所を選定、長野県と合同で計画を策定して来年度からの捕獲につなげる。7日の県議会環境農林常任委員会で概要を説明した。

 同村を中心に生産される夏秋キャベツの出荷量は日本一を維持している。村によると、シカによる農作物被害額は昨年度は8500万円で、17年度の3倍以上。金網や電気柵を広域に設置しているが、侵入を防ぐのは難しいという。被害の大半はキャベツで、農林振興課は「特産のキャベツを守るため、データを分析して有効な対策でシカを一網打尽にしたい」とする。

 県によると、野生鳥獣による県内の農作物被害額は20年度は3億2800万円に上り、約4割をシカが占める。長野県も同様にシカによる被害が最も多く、2億1800万円に及ぶ。同県鳥獣対策室は「群馬県境でシカの数が増えており、危惧している。これ以上被害が拡大しないよう、群馬県とよく連携して取り組みたい」とする。

 国は昨年6月に鳥獣被害防止特別措置法を改正し、鳥獣の生息状況調査や捕獲活動について都道府県の役割を強化。改正に伴って鳥獣被害防止総合対策交付金に広域捕獲活動支援事業が新設され、県が実施する広域捕獲に関わる調査が補助対象となった。

 県は本年度の事業費として、一般会計5月補正予算案に2千万円を計上している。