全ての物事に良い面と悪い面があります。今回は、あらゆる場面で陰陽の「双極の視点」を持つ意味について、自らの経験を踏まえ考えます。

 大学野球を引退してから米・独立リーグに挑戦しましたが、当初は自分の打撃技術が全く通用しませんでした。15年ほど野球を続けてきたので、最初は現実を受け入れがたく、かたくなに自分のやり方で突破しようとしたり、それが通用しないと分かると過度に落ち込んだりしました。成績は低迷し、ついに次の試合で打てなければクビだと宣告されました。

 その夜、深夜まで悩み抜いた末、開き直って、今まで間違っていると思っていた打ち方をしてみることに決めました。すると次の日に大活躍でき、なんとかチームにとどまることができたのです。まさに、双極の視点を持つことによる成功体験を果たした瞬間でした。

 自分が信じて積み上げてきたことを手放すのは勇気が要りますが、そもそも過去の少しの成功体験に基づいて、それが絶対に正しいと思い込んでしまう固定観念こそが失敗の源にもなり得ると気付けた貴重な出来事でした。

 米国と日本など、文化や常識自体に違いがあるからこそ、それぞれの違いを受け入れて陰陽の両側面から眺める必要があり、そこでは自分の強みを生かしながら環境に適応していく能力を身に付けることが必要だったのです。

 現在はコーチという立場で人と関わる上で、「双極の視点」を持つことの価値を感じています。例えば、人間は欠けていることが普通で完璧な人など存在し得ないので、自身が短所だと思っている点も見方を変えると長所になり得るのです。そのため、その人の一部の問題を切り取ってジャッジしたり、変えようとしたり、自分が思う正しさを押し付けてしまった時に、思うような成果が出ないことが多くあります。まずは、あらゆる側面から問題を受け入れ、寄り添うことが大切です。

 クライアントの人生と関わる中で、過去の自分の似たような「失敗経験」がさまざまな場面で役に立っており、経験に不必要なものなどないのだと気付くこともあります。

 学生時代を振り返ると、学校のテストの「正しい解答」は一つだけで、そうした学習法だけを経験していると双極のバランスを取る思考方法を身に付けるのは難しいかもしれません。多様性が進む現代社会において、「これが正しい、間違っている」という価値観で生きるのはあまりにも摩擦が大きく、疲弊してしまうように感じます。

 「人は誰もが不完全である」と受け入れて、身の回りの事象に対して陰陽の双極を見いだし、バランスを取りながら成長し続けていくことが、これからの時代をより自分らしく生きる上で大切だと考えます。

 【略歴】慶応高2年時にレギュラーとして明治神宮野球大会優勝。慶大でも野球を続け、卒業後は2016年まで米・独立リーグでプレーした。伊勢崎市出身。

2022/6/9掲載