被害に遭った西毛地域の寺が事件後、本堂に設置したセンサーライト。人が接近すると自宅にチャイムが鳴り、侵入を知らせる

 群馬県内で昨年6月ごろから寺院を狙った窃盗事件が相次いでいる。捜査関係者らによると、昔ながらの建物で防犯対策が不十分とみて狙われた可能性がある。警備の手薄な本堂から侵入して廊下でつながる住宅部分に移動し、金庫などを盗んだケースもあった。群馬などの4県警が窃盗容疑などで8人を逮捕したが、専門家は防犯カメラの設置など対策強化を呼びかけている。

 西毛地域の中心市街地を離れた緑豊かな丘の上。3月に被害に遭った寺院の80代の男性住職は、被害を目の当たりにして唇をかんだ。夜間に住宅部分のほとんどの棚の引き出しが荒らされ、玄関やほかの部屋の戸は開け放たれていたという。早朝に起きるまで気づかなかった。

 捜査員からは犯人は本堂の窓ガラスを割って侵入し、本堂と廊下でつながった住宅部分を物色。部屋内の金庫などを持ち去ったと聞いた。住職は近くの部屋で寝ていた。「まさかこんなところにも来るとは。油断していた」と振り返る。

 金庫は500メートルほど離れた畑で見つかった。バールのようなものでこじ開けられ、現金が奪われていた。1カ月後、県警が逮捕した少年を現場確認のために連れてきた際は改めて怒りが湧いた。「少年といっても善悪を判断できる年齢。罪を償い、金は返してほしい」と話した。

 県警によると、県内の寺や敷地内の住宅を狙った窃盗事件は昨年1月~今年4月に少なくとも76件あり、被害は計1億4300万円を超える。特に昨年6月以降、県内全域で相次いでいるという。捜査関係者は逮捕した少年らについて「初めに忍び込んだ寺で成功し、味を占めたようだ」と明かす。

 こうした状況を踏まえ、総合防犯設備士で防犯設備会社「アルファセキュリティ」(前橋市)代表の新井富美男さんは、防犯意識の向上と対策強化を訴える。防犯カメラや防犯ガラスなど目に見える対策のほか、敷地を外壁やフェンスで覆うことなどを例に挙げ、「現金は本堂や自宅に保管せず、銀行などに預けることも有効」と呼びかける。

 被害に遭った西毛地域の寺は事件後、本堂にセンサーライトを2か所設置し、窓ガラスに「防犯カメラ作動中」のシールを貼った。70代の妻は参拝者に声かけするようになったという。「お寺は顔を知らない人の出入りが頻繁。知らない方に『どちら様ですか』と聞くのは気が引けるけど、(防犯のために)仕方ない」と話した。