(右から)レストランブラジルオーナーシェフの岩田カルロスさん、ダニエルさん、エウザさん

 外国人向けの飲食店が軒を連ねる「グリーンロード商店街」(群馬県大泉町西小泉・坂田)。その一角に、緑の屋根と黄の壁が特徴の「レストランブラジル」はある。

 太田健仁(けんじ)さん(55)=同町西小泉=が1990年に開店した。年に1000人を超すブラジル人がこの町へ移住した頃だ。「同じ国から来た者同士、なじみの料理を食べながら、わいわいしたい」。願いはかなって大盛況に。コミュニティーのよりどころにもなった。

 しばらくして経営が難しくなり、譲り受けたのが知人の岩田カルロスさん(67)。日本人にも来てもらえるよう味付けを変えたり、日本語のメニューを作ったりした。転機は2012年。人気ドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京)に登場し、風向きが変わった。

 「反響がものすごかった。他県からもお客さんが押し寄せた」

 この年から店を手伝っていた長男、ダニエルさん(37)は振り返る。サッカーの14年ワールドカップブラジル大会の影響もあり、繁盛は数年間続いた。

 再び状況を変えたのは新型コロナウイルス感染症だった。客足がぴたりと止まった。

 食材のネット販売、テイクアウト、デリバリー…。手を打ち続けたダニエルさんは「毎日、どうなるか冷や冷やした」。粘り強い対応や常連客の支えもあって、今はコロナ禍前の7割程度まで売り上げを戻した。

 曲折を経てなお、ブラジルの味を日本に伝え続ける店の一押しはフェイジョアーダ。豆と肉を煮込んだ家庭料理で、ダニエルさんの母、エウザさん(64)が手作りしている。「やっぱり、この味」と店のファンの折り紙付きだ。

 コロナ禍のあおりを受け、近くで長年営んでいたブラジル料理店が閉店した。90年代から続く店は今やレストランブラジルだけになったという。「思いを引き継いで、店を守る」。カルロスさんは優しくほほ笑んだ。