▼真山仁さんの小説『レインメーカー』は医療過誤裁判を起こされた医師を救おうと、弁護士が奮闘する人間ドラマである。急患の生死を分ける情報源として母子手帳が登場し、記録の重要性が示される

 ▼上毛新聞に連載され、昨年単行本化された。読んだとき手帳の重要性を自分がどれほど認識していたか、胸に突き付けられるようだった。自宅にある2冊を見て、母胎に宿って以来の命の歩みを改めてかみしめた

 ▼子どもの発育の経過、過去に受けた予防接種の種類―。使い始めてから10年以上たって表紙は少し汚れてきたが、最近も新型コロナウイルスのワクチン接種を受けたことを記録し、なお現役である

 ▼厚生労働省が来年度、10年ぶりに手帳をリニューアルする方向だという。母子保健法に基づき、自治体が交付しているが、内容が時代にそぐわなくなっているとの指摘があった。電子化や障害がある子どもへの配慮を盛り込むことなどが検討されている

 ▼父親の意識を高めるため、名称を「親子手帳」に変更するべきだとの意見もあるらしい。戦時中から続く伝統の良い点を踏襲しながら、時代の価値観や社会状況に合った形に変わるのが望ましい

 ▼乳幼児の命を守るとして、福田康夫元首相の妻・貴代子さんが海外への普及に力を注いできた。手帳がどんな形になるにせよ、活用しなくては始まらない。自戒を込めて思う。