私たちが現在の生活水準を維持するには、地球が何個必要でしょうか。
私たちが消費する全ての再生可能な資源を生産し、人間活動から発生する二酸化炭素(CO2)を吸収するのに必要な生態系サービスの総量を「エコロジカル・フットプリント(EF)」といいます。フットプリントとは「足跡」を意味する言葉です。今回は環境負荷を表す一つの指標であるEFから、地球環境の持続可能性(サステナビリティ)について考えます。
国際環境NPO「グローバル・フットプリント・ネットワーク」の試算によると、地球資源の総量を1とする場合、世界中の人が生活するために使っている資源量は2018年時点で1.75となっています。つまり、人類全体の生活を支えるには地球1.75個が必要になる計算で、既に人類は土地や水など地球の資源をキャパシティーを超えて使い過ぎていることを示しています。
少しさかのぼって1960年代から見ると、世界では一貫してEFが上昇しています。特に、CO2を吸収するのに必要な土地面積に由来する「カーボンフットプリント(CFP)」の割合が上がってきています。具体的には、61年から2018年までに、EFに占めるCFPの割合は44%から61%まで上昇しました。温室効果ガスであるCO2のゼロエミッションは地球環境の持続可能性において重要なポイントとなっています。
カロリーベースの食料自給率が約4割で、約6割の食料を輸入している日本は、海外の水資源利用や輸送による温室効果ガス排出など、さまざまな環境負荷を生み出していると言えます。
一方、年間約600万トンもの食料を廃棄していることで、多くの資源やエネルギーを消費しています。世界自然保護基金(WWF)の12年レポートは、日本の食料廃棄をゼロにすると食料由来のフットプリントは約25%削減できると試算しています。
このことは、単純に「食料がもったいない」という意識を高める効果を生むだけではありません。私たち消費者が食料廃棄を減らすために日々の生活スタイルを見直すことで、産業部門は新たな消費需要に対応しようと変化するでしょうし、生産効率の向上や地球環境に配慮した商品の増加にもつながると考えます。
SDGsなどで注目される「持続可能な開発」が提唱されてから30年以上が経過しました。しかし、今なお、地球温暖化による気候変動や生物多様性の喪失など、さまざまなところで地球の悲鳴が聞こえてきます。
将来世代のニーズを満たす可能性を損なうことがないよう、私たち一人一人が反省を込めて日々の生活を振り返ってみませんか。一つしかない地球の未来を一緒につなげていきましょう。
【略歴】農業経済学、食料経済学が専門。食生活の変化や食料自給率などを研究。信州大助教を経て2019年から現職。兵庫県出身。神戸大大学院博士課程修了。
2022/6/12掲載