文系と理系のことを、英語でそれぞれ何と言うでしょうか?

 答えは「日本で言う文系と理系を表す英語は存在しない」です。インターネットで検索するとこう出てくるじゃないか、という意見もあるかもしれませんが、学問を文理の二つに分けているのは日本だけです。そのため、外国語には日本の文系・理系に相当する概念がありません。文系・理系という概念は日本だけに存在しているのです。

 歴史的には、官僚制度と大学入試にルーツがあると言われています。詳細は隠岐さや香著『文系と理系はなぜ分かれたのか』(星海社新書)にあります。

 簡潔に述べると、国家公務員における事務官と技官の違いが文系と理系を生んだようです。国家公務員試験の予備校でもあった大学が事務官と技官向けの学部をつくり、これらの大学に入るための高等学校で事務官向けを文系、技官向けを理系としました。1918(大正7)年の第2次高等学校令に「第八条 高等学校高等科ヲ分チテ文科及理科トス」とあり、これが文系理系に分かれた始まりです。

 現代はこの縛りがなくなり、文系理系に分ける必要はありませんが、多くの進学校が2年次に文理のクラス分けをします。いまだに大学の一般入試では理数系が少ない文系、国語社会が少ない理系に受験科目が分かれるからです。

 元々国家公務員試験のために文理の区分けをしたので、大学卒業後に一般企業に勤める場合、文理は関係ありません。一般企業に就職する生徒を文理分けする高校もありますが、これも関係ありません。文理選択に悩む高校生で、数学が苦手だから文系、国語が苦手だから理系という安直な選択をする生徒もいます。歴史的な背景からすれば意味はないでしょう。

 ただ最近は、文系理系どちらでも受験可能な大学が増えてきました。例えば、群馬大情報学部は文系理系両方に合わせて2通りの入試科目を設定しています。「情報」には情報リテラシー(主に法律の知識)などの文系的な要素と、コンピューターの仕組みや数値計算の知識など理系的な要素の両方があるからです。少なくとも「情報」は、文理どちらでもないのです。

 私は、学問を文理の二つに分けようとすることに無理があると考えています。文理どちらであろうが、国語は絶対に必要です。理系だから地歴公民ができなくて良いということもありませんし、逆に文系だから数学や理科ができなくて良いということもありません。

 どの教科も、社会に出て必要になる場面が必ずあることを、社会人の皆さんは経験しているはずです。何かに直面した時、「自分は文系だから関係ない」「理系だから関係ない」などと言うのは“逃げ”ではないでしょうか。

 【略歴】2017年4月から現職。16年9月にマイクロソフト認定教育イノベーターの資格を取得、22年1月からグーグル認定トレーナー。樹徳高教諭。

2022/6/16掲載