「国際競争力のある抗体医薬品の実用化を進めたい」と語る辻教授

 アスベスト(石綿)の吸引で引き起こされるがんの一種、中皮腫の特効薬となる次世代抗体医薬品=ズーム=の開発を目指す群馬医療福祉大(群馬県前橋市)などの研究が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の事業に採択された。関係6機関が3月に共同研究に関する契約を締結。中心メンバーで同大の辻祥太郎教授は「順調なら5年ほどで実用化できる。日本で開発製造する抗体医薬品として世界的な需要が見込める」と意気込む。

 特効薬に用いるのは、辻教授が神奈川県立がんセンター(横浜市)在職時代に発明した中皮腫向け抗体「SKM9―2」。医薬品メーカーの日本メジフィジックス(東京都)と医薬品開発を進め、次世代バイオ医薬品製造技術研究組合(MAB)が量産態勢を整える。

 京都大が同医薬品の効力について、理化学研究所が安全性の検証について研究を担当し、慶応大が承認手続きで協力する。国際競争力のある次世代抗体医薬品の開発を目的としたAMEDの事業に採択された。

 抗体医薬品の世界市場規模は2021年時点で推計約17兆円。30年には28兆円に拡大するとの予測もある。ただ、開発と製造の中心は欧米で、国際競争力のある国産品の開発と製造が課題となっている。

 辻教授によると、中皮腫は石綿吸引から40年ほどたって発症する。早期発見が難しく、有効な治療薬がない。国内の年間死亡者は約1500人で、今後30年ほど発症が続く見通しだ。中国など現在も石綿を使う国は複数あり、中皮腫は今後、世界的に増えると危惧されている。

 辻教授は「純国産技術を結集する研究。欧米に頼らず抗体医薬品を開発・製造できるよう体制を整えたい」と見据えている。

◎抗体医薬品 
免疫システムの抗体を利用して開発した医薬品。がん細胞などをピンポイントで攻撃するため正常な細胞を傷付けるリスクが低く、高い治療効果と副作用軽減が期待できる。