私がライフワークとしている「小倉百人一首競技かるた」は、記憶と集中の競技だ。選手は試合中、札の位置を覚える記憶と、読み手の声を聴く集中を交互に繰り返す。1試合がおよそ90分、その間絶えず頭をフル回転させていなければならない。大会の多くはトーナメント形式で行われ、多いときでは7試合、朝から夜まで戦い抜く必要がある。

 私はこの競技で3年間名人位に就いていた。日本一でいるためにさまざまなことを意識していたが、特に気を付けていたことがある。

 それは「食事」だ。言うまでもなく、私たち人間の体は、私たち自身が食べた物によって形作られている。それは脳も例外ではない。脳のために摂取すべきものはたくさんあるが、今回は特にお薦めの食品二つと、私が最近注目している栄養素について解説する。

 一つ目はカシューナッツだ。カシューナッツには、「チロシン」という物質が豊富に含まれている。チロシンには精神を安定させる効果があるため、大事な仕事の前やテスト前は、積極的に取るようにすると良いだろう。

 カシューナッツにはそのほか、集中力を高める働きがある「不飽和脂肪酸」や、不足すると集中力が低下する「亜鉛」が含まれているのも、お薦めポイントだ。コンビニやスーパーで手軽に買えるのも良い。

 二つ目は納豆である。納豆には、記憶力や学習能力を高める「レシチン」、脳の神経伝達物質「アセチルコリン」のもととなる「コリン」、不足により集中力が低下する「カルシウム」、無気力を防ぐ「カリウム」、高ぶってしまった神経を抑える「マグネシウム」などが含まれている。

 いわば、脳に良い物質のフルコースだ。白いご飯の上にのせる食べ方が一般的だが、小腹がすいた時におやつ感覚で食べることもお勧めしたい。

 最後に、私が今注目している栄養素、「クレアチン」を紹介する。

 クレアチンはアミノ酸の一種で、これまではスポーツ選手やボディービル選手が摂取するものとして知られていたのだが、近年、脳疲労の軽減に大きな効果があることが分かってきた。特に、睡眠不足の時や精神的に疲れている時に加えて、運動後の認知力向上にも効果的であり、今後注目されていくだろう。

 クレアチンは肉や魚に多く含まれているが、調理すると減少してしまうことが分かっている。摂取しやすいサプリメントを利用するのがお勧めだ。

 娯楽が多様化したり、スマートフォンが普及したりしたことなどによって、現代は集中力を阻害する要因が身の回りにあふれかえっている。今よりも集中して仕事や勉強をしたいという方は、ぜひ食事に意識を向けてみてほしい。

 【略歴】百人一首競技かるたで2019年~21年の名人位。大学受験中心のオンライン個別指導塾「となりにコーチ」を経営。安中市出身。中央中等教育学校―京都大卒。

2022/6/20掲載