大人の「リアル」も描く

藤岡市立図書館(藤岡市藤岡) 栗原靖さん

「一般に児童書と呼ばれていても、決して子どもたちのためだけのものではない書物はたくさんある」。栗原さんは少年時代から親しんでいる本書の魅力を、「子どものリアル」と「大人のリアル」だと語る。

 


 舞台は第1次世界大戦の頃の英国の湖水地帯。夏休みを過ごすためにやってきた4人きょうだいは、親から小型ヨット「ツバメ号」をプレゼントされる。子どもたちはキャンプや探検を楽しみ、そこに「アマゾン号」を操る地元の姉妹が現れる。姉妹のおじさんという人物から「湖の中の島に宝物がある」と知らされ、競争が始まる。


 英国生まれの著者、アーサー・ランサム(1884~1967年)は、革命期のロシアや中国で記者として活躍。母国に情報提供していたが、革命勢力に近いとみられており、二重スパイのような体験をしている。帰国後の29年に本書の執筆を始め、12の作品からなる代表作となった。


 栗原さんは「現実は都合よくいかず、さまざまな制約に苦しめられながら、それを乗り越えていくところに、子どもたちのリアルがある」という。おじさんについても、宝探しにかこつけて、もう一花咲かせようと狙う大人のリアルが描かれている。

 「良い児童書とは子どものうちに読み、成長しても繰り返し楽しめるもの」と強調した。


【こんな人におすすめ】
 総ルビで学年にかかわらず読める。

【こちらも“推し”】
 ともしびをかかげて(ローズマリ・サトクリフ著、猪熊葉子訳、岩波書店)