群馬県には中山道や三国街道などが通り、古くから多くの人が行き交った。交通が発達した現在も、関東と信越をつなぐ要衝となっている。古今東西、移動中の楽しみといえば、おいしい食事。どれだけ厳しい道のりでもうまい飯、そして人情に触れれば元気が出る。一口食べれば心に染みる、群馬の街道沿いの食堂を紹介する。
群馬県を南北に貫く国道17号は、県内外のドライバーが行き交う大動脈だ。渋川市の国道沿いにもつ煮で名をはせる食堂がある。行列ができる人気店で、ネット上でも話題の「永井食堂」(同市上白井)を訪ねた。
関越道渋川伊香保インターチェンジから赤城山を横目に国道17号を北へ進むと、左手に店が現れる。大きな看板に「うまい安い早い」「もつ煮は日本一」の文字。駐車場には「新潟」や「八王子」、「愛媛」など県外ナンバーの車が止まり、全国的な人気をうかがわせる。
平日昼過ぎにもかかわらず、店内は観光客風のカップルやサラリーマン、トラック運転手らで20席ほどのカウンターの半数が埋まっていた。
注文したのは定番の「もつ煮定食」(590円)。「大盛り定食」(770円)も含め、もつ煮を頼む客が大半という。驚かされるのは提供されるまでのスピードで、注文から30秒せずに出てきた。開店前に2時間以上煮込んだもつは軟らかく、みそベースの汁がしみていて箸が進む。ボリュームたっぷりの県産コシヒカリによく合い、もつと一緒に食べても良し、汁をかけて食べるのも良しだ。多くの人が座れるようにトレーは縦置きがルールで、皆黙々ともつ煮に向かっていた。
店の始まりは50年以上前。当初は、店を切り盛りする永井昭江さんの父・好平さん(故人)が、改造したトラックを店替わりにして麺類を出していた。そのうち、トラックドライバーから「ご飯ものが欲しい」と要望があり、群馬名物のもつ煮を置くようになった。元々人気店だったが、約10年前に人気テレビ番組で紹介されてから、客が全国から訪れるようになった。土曜には1日800食近く売り上げることもあるという。
来店していた新潟市の男性(49)は「職場の仲間に勧められて来た。おいしくて、わざわざ来て良かった」とうなずく。店内では持ち帰り用のもつ煮(1パック1000円)も販売している。6パックを購入した新潟県上越市の男性(64)は「30年以上前からここに通っている。地元の仲間にお土産をあげるんだ」と両手にビニール袋を提げて店を後にした。
「営業中に来られなかった人のために」と2017年には店の外に自動販売機を設置し、営業時間外でももつ煮を購入できるようにした。永井さんは「お客さんとの交流が大好きでパワーをもらっている。看板の『うまい安い早い』の文字通り、これからも真心込めて営業していきたい」と意気込んでいる。
住所 群馬県渋川市上白井4477-1
電話番号 0279-26-3988
営業時間 平日 9~18時
土曜 9~15時
店休日 日曜、祝日