
パン店「はるぱん」の中村榛花さん(左)、羽鳥かすみさん(右)
「同志」に出会い夢実現
「自然と人が集まる場所にしたい。そこにはおいしいパンとコーヒー」。専門学校の同級生だった中村榛花(はるか)さんと羽鳥かすみさんの2人が、前橋市中心街の空き店舗を利用したパン店「はるぱん」の開店準備を進めている。夢の実現に向けて働く2人から進路を考える高校生にエールを送る。
専門学校の同級生 パン店開店へ
子どもの頃から「大のパン好き」な中村さんと、ラテアートに感動してカフェで働くのが夢だった羽鳥さん。専門的な知識を身に付けたいと、それぞれ高校卒業後に専門学校に進学し、製菓製パン学科のクラスで出会った。同学科カフェ専攻で学んだ羽鳥さんは「エスプレッソの入れ方など実践的に学ぶには専門学校に進学するのが良いと思った」と話す。
失敗から学ぶ
2人は専門学校時代、パンやカフェの授業以外にも洋菓子や和菓子など幅広い知識と技術を習得。パンづくりの実習では、意図的に塩を入れずに失敗作をつくることがあった。パンづくりに必要な塩はほんの少量だが、忘れると驚くほど味が落ちる。それを身をもって体験できたことは良い経験になったという。「就職してからでは、なぜ失敗したのか細かく説明してもらうのは難しい。専門学校で学んだから得られた知識があった」と中村さんは振り返る。

卒業後、中村さんは高崎市内のパン店に、羽鳥さんは太田市美術館図書館内のカフェに就職。中村さんは2020年5月に高崎市内のカフェに転職し、併設店舗内のパン店で店長を務めた。羽鳥さんは同年3月に就職先のカフェの姉妹店で店長に抜擢された。
同時期に若くして責任ある立場となった2人は、店舗運営の苦労や喜びを語り合う関係に。「1人では大変なことも2人なら楽しいんじゃない?」。昨年末、お互いの専門分野を生かしたパンとコーヒーの店「はるぱん」として独立。イベント出店を中心に活動していたが、実店舗を持ちたいと、今年2月に空き店舗の本格的な改修工事に取り掛かった。
「手に職」強み
そんな時、新型コロナウイルス感染拡大の影響から資材が高騰し、開店予算は当初の2倍以上に膨れ上がった。なるべくコストを下げようと、自分たちで壁を塗るなどリノベーションを手掛けた。「大変だけど2人だから楽しんでできた。かえって愛着が湧く」と困難も笑顔で乗り越える。不足の資金はクラウドファンディング(CF)を利用して目標額の200万円を調達。今秋のオープンに向けて確実に歩みを進めている。

「『手に職がある』のは強み」。2人は専門学校に進んで良かったと口をそろえる。進路に悩む高校生に「同じ目標を持った同志と出会えたことは大きかった。情報交換をするなど、今でも多くの友人とつながっている」と語る。「やりたいことが見つからない人も多い。せっかく興味のある分野があるなら思い切って飛び込んでほしい」。夢の実店舗オープンへ笑顔がはじけた。