今春、NPO法人よいおやさいの活動に社会人2年目の方が参加してくれました。入社してから実際に出勤したのはたったの数日。4月に後輩が入ってきたが直接顔を合わせたことは一度もないなど、これまで考えられなかったような職場環境になっていると聞きました。

 多くの企業ではコロナ禍を機に、リモートワークの導入が急激に進みました。在宅でも業務に取り組めることが実証されたようです。パソコンワークの割合の高い業種では完全在宅ワークに切り替えて、事務所を縮小した会社まであります。就職や転職の際に在宅勤務できることを条件にしている人も増えているそうです。

 新しい働き方としてリモートワークが広がる一方、社員の管理の難しさやコミュニケーションの希薄化という問題点が出てきています。業績や生産性を数値化しづらい業務では、仕事への取り組み方や意欲など勤務態度全般が評価対象となりがちで、そのため在宅勤務中の行動管理が新しいストレスを生んでいるようです。現在は試行錯誤の段階なのだと思います。新しいコミュニケーションツールが増えるなどして改善されることを期待します。

 休職者や定年退職後の再雇用として、会社に所属しないフリーランスの活用も進んでいます。企業にとって能力ある人材の確保は重要なことですし、働く側にとっても自分の経験や能力を生かしながら、会社に縛られず活躍できる場が増えているのは素晴らしいことだと思います。

 就農というと、早期退職や定年後にチャレンジするというイメージを持つ方が多いようです。多彩な働き方が広がることによって、「地方に住んで、都心の会社にリモートワークしながら農業をする」という生活スタイルを実現できると考えます。在宅で仕事をすると体を動かす機会が減ります。外に出て体を動かすという意味でも農業は最適でしょう。日ごろ多忙でリフレッシュのために農業ボランティアに参加する方も多くいますが、地方でリモートワークをしながら農業をすれば、ストレスをため込まない暮らしができそうです。

 先日の活動で、ご主人が海外赴任から帰国するのを期に地方に移住して農業を始めるという方がいました。気候や環境も分からない初めての土地ですぐに収益を出すのは大変だと思いますが、海外勤務の経験を生かしたリモートワークと農業という、二足のわらじも良いのではないでしょうか。

 コロナ禍によって「密」を避ける社会環境になってきました。都心を離れて地方に移住する人を受け入れる自治体は、今こそリモートワークの環境を整え、新しい働き方を後押しできる街づくりを進めていただきたいです。



NPO法人よいおやさい代表理事 篠崎和彦 埼玉県朝霞市

 【略歴】東日本大震災でのボランティアを契機に、2013年、渋川市で農業ボランティアを開始。現在は同市北橘町でブルーベリー畑を管理する。東京都大田区出身。

2021/10/22掲載