1年間の本欄執筆中、読者の方から手紙や会員制交流サイト(SNS)を通じてメッセージをいただき、励みや勉強になりました。地域に根付いた信仰や修験道に関心の高い方ばかりで、皆さまの郷土愛を深く感じます。

 「『視点』に山伏が登場されると期待しておりましたが、まさか女性の方とは驚きました」。そう書かれたお手紙から大きなご縁をいただきました。今回は寂照山北斗宮(じゃくしょうさんほくとぐう)のお話を紹介します。

 このお宮は、渋川市津久田に祭られています。皆さまは書家の角田無幻をご存じでしょうか。吉岡町の修験道寺院に生まれ、京都に上って光格天皇に「千字文」を奉呈したことで知られます。県内には石碑や道祖神、庚申塚、赤城山大鳥居の山号など、無幻の書が数多く残っています。津久田は無幻の青年時代の修行の場で、修験とも大変ご縁のある地です。寂照山には北斗宮のほかにも、無幻の弟子たちによる遺髪塚などが祭られています。

 北斗宮は1906年に建立され、地元住民の信仰を集めました。20年に1度改修されてきたようですが、近年は信仰も薄れ、荒れていました。手紙をくださった方はお宮の荒れた姿に心を痛め、改修工事の担い手と工事前の御祈祷、改修後の法要を執り行ってくれる僧侶を探していたそうです。「角田無幻の縁ある場所で、できれば同じ修験道僧侶で山伏に来てほしいとずっと願っていた」と話してくれました。もっとも、「まさか新聞を通じて出会うとは思わなかった」と驚いていました。

 改修は、人づてに話を聞いた赤城町深山の宮大工が喜捨で行ってくれました。屋根を葺き替え、扉や床を直し、縁側も取り付けられました。実際に工事を行った棟梁(とうりょう)や法要の導師を務めた私だけでなく、参道を整備し、竹を切ってくれた方、石段を掃除してくれた方など、「北斗宮をなんとかしたい」という熱い信念を持った施主様に心を動かされた方が大勢いらっしゃいました。

 「うまくいって良かったですね。きっと神様がそうさせたのでしょう」。誰かがそう言いました。北斗宮のご縁に動かされ、たくさんの方の思いに触れることができました。これからも北斗宮の妙見菩薩様が、渋川の山上からわれわれ衆生を慈悲深く見守ってくれることでしょう。

 本欄で修験道やこれまでのさまざまなご縁を書かせていただきましたが、仏教は「偶然」や「たまたま出会った」という考え方をあまりしません。全てが神仏によるご縁でつながっています。良いご縁もあれば、悪いご縁もあるでしょう。皆さまも変化する時代の中で、人々のつながりや地域に根付いた文化、郷土愛をもう一度見直してみてはいかがでしょうか。



大福院僧侶 小野関隆香 榛東村広馬場

 【略歴】県内最年少の女性山伏。京都の聖護院で2017年から2年間修験道を学び、19年4月に大福院(榛東村)へ。21年から住職。法話会で山伏の文化を伝えている。

2021/10/21掲載