拝啓
 スクリーンを超えた世界はあるのか? これは太田市のための映画『サルビア』を制作する際の私自身のテーマの一つでした。

 トリュフォーの『大人は判ってくれない』ラストシーンのジャン=ピエール・レオの視線の先。ゴダールの『気狂いピエロ』ラストの水平線。これらの名シーンはスクリーンを超えた世界、一種の永遠性が表現テーマとなっていたように思います。

 でも「永遠」は撮ることはできません。概念はカメラには写らないのです。この「概念」を表現できるのかが、映画がその創世から抱える課題であり、求めてきた主題であったのかもしれません。

 あなたたちによる初の映画だった、機関車がスクリーンから抜けるショット。人々は動く機関車に驚愕(きょうがく)しました。スクリーンから迫って来る機関車の映像に思わず身をよけた観客もいたといいます。機関車はどこへ向かって行ったのでしょうか。四角い銀幕を超えた世界には何があるのでしょう。カメラでは捉えられなかった世界、おそらく永遠へと向かっていったのかもしれません。あなたはそのことを分かっていたのですか? あるいは映画が映画である可能性を予見していたのでしょうか?

 そして、あなたがいなくなってからもスクリーンの中ではチャプリン、グレース・ケリー、三船敏郎、ヘプバーンらが永遠の生命を得ています。『気狂いピエロ』のベルモンドとカリーナも、ランボーの詩と共に銀幕を超えた世界で語り合っているでしょう。

ベルモンド「見つかった」

カリーナ「何が?」

ベルモンド「永遠が。太陽と共に去った海さ」

 スクリーンの枠を超えた世界。それが映像の永遠性です。そして映画は、永遠を可能にする装置なのかもしれません。敬具

追伸
 その後、「永遠」を意識して生き抜いた名優が登場しました。映画という動く写真のマジックが生んだ最高のカリスマの一人、ジェームズ・ディーンという若者です。彼は早世しましたが、彼の生き生きとした姿は彼の魂と共に、いまだにわれわれを魅了しています。彼はこう言い残しました。

「DREAM AS IF YOU WILL LIVE FOREVER/LIVE AS IF YOU WILL DIE TODAY(永遠に生きるつもりで夢を抱け。今日死ぬつもりで生きろ)」

 リュミエール兄弟さま。どうやらあなたたちが生み出した動く写真の実験は、あなたたちの想像を超えた人類の文化財産になったようです。

 天国で会いましょう。アビアント!



ぐんま国際アカデミー(GKA)中高等部教諭、映画・映像アーティスト 小田浩之 東京都

 【略歴】GKAで映画製作の授業を実践。太田市PR映画「サルビア」で監督を務める。2018年度県文化奨励賞受賞。慶応大付属研究所リサーチャー。東京都出身。

2021/10/16掲載