命吹き込んだ職人に感銘

山田書店(富岡市富岡) 山田克已さん

 「繭から糸を巻き取る作業は、富岡製糸場ができてから機械化された。日本近代化の礎となり、開業150年を迎える製糸場や絹産業遺産群の価値を、この本で知ってほしい」。店主の山田さんはこう薦める。


 本書には場内の説明や開業までの経緯、歴史などが書かれている。設立に携わったフランス人技師、ポール・ブリュナの給料が、30歳にして当時の大臣に近かったという一節もある。

 

 感銘を受けた内容に、1年4カ月で製糸場を造った職人の功績を挙げる。「突貫工事でも無機質なものに命を吹き込み、手を抜かずに完成させた」


 本書は製糸場が世界遺産登録される3カ月前の2014年春に発行された。山田書店では当時、地元を盛り上げようと製糸場関連本のコーナーを設置。「高揚感があった」と懐かしむ。


 市街地にある同書店は1918(大正7)年に開店。山田さんは家業を継ぐため、高校卒業後に千葉県内の書店で修業を始めた。ところが創業者である祖父が体調を崩す。2代目店主だった父親を手伝うため、山田さんはわずか半年で古里に戻った。それから約60年。客が減った店は、3代目の自分が畳むつもりだ。


 入場者数の減少など、製糸場を取り巻く環境は厳しい。それでも、「せっかくの世界遺産。維持管理に手間や費用がかかっても残してほしい」と願う。

【こんな人におすすめ】
 観光客や、富岡製糸場のことを知らない地元の人に

【こちらも“推し”】
 富岡日記(信州教育出版社)、南三社と富岡製糸場(今井幹夫著、上毛新聞社)