「One World One Health」という言葉がある。人間と動物の健康、そして地球の健全性は一つにつながっているという考え方だ。

 私は昔から自然の中で遊ぶことが好きで、さまざまな生き物や動物と関わってきた。ヒトは動物の一種であるし、ヒトを特別視したことがなかったので、この考え方はすとんと納得できるとともに、自分がサファリから何を伝えたいかの理念にもなった。

 動物園や水族館に行くと、普段は見ることのできないさまざまな国や地域の動物を見ることができる。その動物を見て楽しんでもらうことはもちろんだが、その一歩先に、その動物を通じて生息地のことや地球のことを感じてほしいと思う。

 環境の変化やヒトによる乱獲でたくさんの動物が絶滅してしまった。現在、絶滅の危機にひんしている動物も数多い。確かに、ヒトはさまざまな製品や機械を作って環境に適応してきた。しかし、動物がすめない世界では、ヒトだって快適には過ごせないと思う。

 そして地球の話となるとスケールが大きいが、身近な自然も変化していることに気付いてほしい。例えば、身近にあった森がヒトの手によって伐採され平地になったり、川の擬岩工事が行われたりと、気にしてみるとさまざまな変化が起きている。それによってすみかを奪われる野生動物はたくさんいる。

 群馬に住んでいると、周りにはまだまだ自然も多く、植物や生き物の四季の変化を感じ、楽しむことができる。私は今のそんな環境が大好きだ。だが、都市化が進み、自然や生き物を感じる機会が減っている地域が少なくない。そんな社会で、動物園、水族館は「自然への窓口」でありたいと考えている。

 そして、もともと環境などに興味がある方々だけでなく、サファリを訪れる全てのヒトに動物や自然、環境に対する気付きを見つけてもらえたらうれしいと考えている。

 現在までのヒトの活動によって地球環境は大きく悪化した。それは、気候変動や生物多様性の低下だけでなく、動物からの感染症拡大などによる人類の存続の危機にまで及んでいる。「One Health」を実現するために必要なことは、私たちが行動を変えることである。今まで培った知識や技術を生かして、地球そのものを健全な状態に戻す努力をする必要がある。

 私は日々、動物たちと接する中で、動物の持つ力強さや寛容さなどに驚くことがたくさんある。動物たちからいろいろなことを教えてもらっていると実感する。そんな動物たちとの触れ合いを通じて、今後も一緒に暮らしていける未来を考えてほしい。



群馬サファリ・ワールド獣医師 中川真梨子(富岡市南後箇)

 【略歴】獣医師として九州のサファリパークに約4年勤務後、2015年7月、群馬サファリ・ワールド入社。動物の健康管理や治療を担う。北九州市出身。麻布大卒。

2021/9/3掲載