今の職場で園長に就任してから、間もなく20年が過ぎます。この間、こだわってきた言葉の一つが「組織論」です。園長就任後の数年間、私は園の運営関係者に向けて毎月お便りを発行していました。17年前の2004年2月号で園の取り組みについて、一定水準以上の保育実践ができているという評価をした上で、次のようなことを書いています。

 〈もっと上を目指して世の中の動きを敏感に捉え、同時に子どもたちにとって何が大切かを考えながら職員が一体となって進んでいくといった動きを組織的に行う点では、当園は、少々弱いのではないかと思います。いろいろな園の園長先生のお話を伺ってみると、このことは当園に限らず、この業界に共通する問題でもあるようです。

 職員が参加する研修は、幼児の理解や指導に関するもの、運動会の実技研修などが大半を占め、保育者が企業人として働くためのポイントを学ぶ機会はほとんどありません。他の園においても新人として仕事を始める際に、大企業で行われるような数週間から数カ月に及ぶ新人研修が行われることはまれだと思います。従って企業の中でのコミュニケーションの在り方、物事の考え方といったいわゆる組織論的な勉強をする機会も少ないのです。

 新しい職員が初期の段階でいわゆるホウレンソウ(報告・連絡・相談)の重要性を学ぶなど基礎的な理屈を理解することや、中堅といわれる職員が若い職員を指導する必要性を自ら感じ、自発的にその役割を果たしていけるような環境をつくることも重要だと思います。

 保育の現場にまずなくてはならないのは、子どもたちを受け止める広く温かい心であることは言うまでもありません。しかし、現在の福祉の世界には、それにプラスして職業人、企業人としての厳しい意識も必要です。相反するようなこの二つの意識(心)のバランスをどのように取っていくかがこれからの福祉施設運営のキーポイントではないかと考えます〉

 この文章を書いてから長い年月が過ぎ、保育業界でも「組織マネジメント」という言葉が聞かれるようになりました。それでも、私の考え方の方向性は変わりません。それどころか、今の複雑化する社会の中で、私たちの業界に限らずさまざまな組織がその存在意義を問われ、同時に、その組織のトップに立つ人の考え方や行動力が注目されるようになってきたと感じています。

 自分の所属する組織が何のために存在し、その中で自分はどのような役割を求められているのかを考え、実践する。そのことが、新たな時代を生きる私たち一人一人に求められていると考えます。



県保育協議会会長、赤城育心こども園園長 深町穣 前橋市柏倉町

 【略歴】2003年から園長。19年、県保育協議会会長に就任。いち早くこども園運営に乗り出したほか、地域子育て支援センターの運営に関わる。上智大法学部卒。

2021/08/30掲載