昨年、一昨年と、私たちNPO法人よいおやさいが渋川市の畑で栽培しているブルーベリーを盗まれました。ボランティアさんと共に手間をかけて育てているだけに、大変ショックでした。今年は被害がないように防犯カメラを設置しました。設置後、カメラの監視が届かない場所に人が立ち入った形跡はありましたが、被害はありませんでした。カメラに盗難防止の効果があったと言えるでしょう。

 以前、本欄に防犯カメラは高額で、損害の少ない畑では導入しづらいと書かせていただきました。しかし、インターネットサイトで機器を購入して自分で設置してみると、思ったより安価で導入できることが分かりました。電池式のカメラの機器だけなら数万円程度で設置できます。機種によっては人や物の動きを検知して録画したり、夜間に赤外線で撮影したりと、多彩な機能があります。畑にインターネット環境があれば、異常を検知してパソコンやスマートフォンに通知できるので、いち早く確認しに行くこともできます。

 昨今、事件や事故のニュースで防犯カメラの映像を目にすることが多くなりました。都心部では警察などによって街頭防犯カメラシステムの導入が進み、カメラの増加とともに犯罪件数が減ってきているというデータもあるようです。しかし、カメラの設置は市街地などが優先され、農村地域では点在するコンビニ店舗などにあるくらいで、あまり増えていないように感じます。

 盗難被害に遭って分かったことがあります。農産物は畑で盗まれますが、畑の中を監視するよりも、畑の周辺道路を監視する方が有効だということです。農産物を盗もうとする人物はたいてい車でやって来ます。荷物の運搬に向いているトラックなどでしょう。カメラの解像度は上がっていますので、周辺の道路を通る車のナンバーも鮮明に写ります。夜間に畑の近くに止まっている他県ナンバーの車やレンタカーなどはかなり怪しいと言えるでしょう。そのような不審な車や人物が映像に残るだけでも、犯罪抑制や犯人検挙に大きな効果があります。

 農産物の盗難は収穫期に限られますので、その時期だけリアルタイムでしっかり監視できれば、被害はなくせるのではないかと考えています。私たちも盗難の防止や撲滅も農業支援の一つと捉え、農家の方に対してカメラの設置をお手伝いできないか検討を進めています。

 防犯カメラでのリアルタイム監視にはネット環境の整備が必須です。市町村などが公衆無線LAN環境を整備する場合、国の助成制度もあるようですから、農村地域でのネット環境を推進していただきたいと思います。農産物の盗難防止だけでなく、災害時にも生かせるはずです。



NPO法人よいおやさい代表理事 篠崎和彦(埼玉県朝霞市)

 【略歴】東日本大震災でのボランティアを契機に、2013年、渋川市で農業ボランティアを開始。現在は同市北橘町でブルーベリー畑を管理する。東京都大田区出身。

2021/8/28掲載