群馬県が5月、「新・群馬県総合計画」を発表した。ここに県のこれからの方針、いわば県が目指す未来像が描かれている。

 およそ5年ごとに更新されてきた総合計画だが、今回はこれまでと比べて大きく二つ趣向が違っている。一つはビジョンと基本計画という二段構えの未来像になったこと、もう一つは県が目指す未来像とSDGsの理念との接続、つまり「持続可能な開発目標」に基づいた県のあるべき姿を全国に先駆けてはっきり提示していることだ。
SDGsとは2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標で、日本はもちろん国連加盟国全てが取り組むべき、地球規模の「共通の誓い」のようなものだ。貧困、教育、健康福祉、ジェンダー、環境問題など17のゴールと169のターゲットから形作られているが、先進国・途上国を問わず、あらゆる国が解決すべき課題と成長の手掛かりが描かれている。

 県はこれまでも総合計画を通じて将来像を描き、時代に応じてアップデートし続けてきた。だが内容が広範囲にわたり、こと細かであったため、県民にはやや読みづらいところがあった。それが今回、総合計画をビジョンと基本計画という2通りのシナリオに分けて発表されたことで、読みやすさと親しみやすさが増した。

 新しい総合計画は、20年後の未来像を構想するビジョンと、このビジョンに沿ってこの先10年間の具体的な政策を示す基本計画という二段構えを取っている。

 まずビジョンでは、40年までの県内外の変化の見通しと、あるべき姿、ありたい姿が簡潔に描かれている。易しい表現でとても読みやすいので、中高生の探求・探究学習にもきっと役立つはずだ。

 一方、基本計画では20年後のビジョンを実現するために必要な七つの政策の柱が描かれている。これらは本県が直面している人口減少や気候変動、新型コロナウイルス感染症の拡大などの要点とともに、SDGsの分野ごとの重点施策と連動する形で示されている。情報量が多いので詳しくは紹介できないが、地域の持続可能性という視点から整理されており、全体像をつかみやすい。そのため高校生や大学生、さらに社会人が本県や県内の地域ごとの特徴(土壌と施策展望)を学ぶ際の基本資料としてだけでなく、SDGsをより身近に学びたい層に向けた、優れた読み物にもなっている。

 今回の総合計画からは県民はもちろん、なるべく多くの人に読んでもらいたいという意気込みが伝わってくる。私も勤務する大学で教材として早速使っているが県政と地域経済、そしてSDGsを丸ごと学べると好評だ。新・総合計画は県のウェブサイトから閲覧・入手できる。未来の羅針盤として、ぜひ多くの人に読んでほしい。



関東学園大准教授 山根聡之(太田市東別所町)

 【略歴】2016年に関東学園大講師、18年から現職。専門は経済学史・社会思想史。和歌山市出身。一橋大大学院博士後期課程単位取得退学。博士(経済学)。

2021/8/12掲載