新型コロナウイルスの感染が拡大して1年半になります。施設に入所している子どもを案じ、早く以前のように会える日々が戻ることを待ち望んでいます。

 5月下旬、子どもの容体が急変しました。重度心身障害者にしばしば起こる誤嚥(ごえん)性肺炎でした。何度も繰り返す肺炎に、子どもの肺はよく耐えていると思います。しかし限界もあり、治療の難しさがあります。

 2年ほど前、医療側と終末期医療について同意書を作成しました。同意書は気持ちが変わればいつでも書き換えることができます。まさに今回、現実を前に心が揺れ動きました。意思表示のできないわが子の医療の選択は、親である私たちがしなくてはなりません。やはり最善を尽くしてほしいと願います。医療側も最善の力で臨んでくださっています。「限界」と伝えられても、子どもは頑張ってくれると信じています。

 個の人格を持つ子どもの医療の在り方は、親だけでは決め切れません。専門家や知人にも相談しました。親の気持ちを思い、冷静な気持ちで答えてくれました。でも最終的に決めるのは親です。長い人生、悩み、岐路に立つこともたくさんあります。悩んだ時に真に相談できる人を探しました。頭の中にどれだけ相談できる人が浮かぶでしょうか? 近くにいる人、いつも会っている人とは関係なく、遠く離れた人が親身になって相談に乗ってくれました。ありがたいことでした。自分の考えを肯定してもらったり、安心感を持たせてくれたり、私の気持ちに寄り添ってくれた人たちに感謝しています。

 今回、支えられて生きていることを痛切に感じました。危機を何度も乗り越えて頑張ってきた子どもは、言葉で伝えられなくても、体で「生きたい」と示してくれています。決めごとをしても生きたいと頑張る子どもの姿を見たら、諦めずに信じようと思います。「今は決められない」。これでもいいと思いました。

 重度の障害の子どもからたくさんの大切なことを学び、親は生きています。障害があっても大切なことを伝え続けている人たちは、この世でかけがえのない存在です。障害の子どもと生きてきた親はそのことを一番よく分かっています。悩み葛藤しながら必死に生きてきて、高齢になった今、子どもを残して逝かざるを得ない現実を前に、親の死後、子どもと寄り添ってくれる方々を探しています。

 この思いを伝え続け、障害があっても個の人格が尊重される社会をつくっていきたいと強く思います。この世で生きている価値のない人など一人もいないのです。相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた事件から5年がたちました。二度と起こしてはならない、風化させてはならない事件として心に刻んでいます。



県手をつなぐ育成会会長 江村恵子 高崎市新町

 【略歴】群馬銀行や藤岡保健福祉事務所内の障害者相談支援センター勤務を経て2017年から現職。全国手をつなぐ育成会理事。渋川市出身。明和高卒。

2021/08/09掲載