9月11日から「中之条ビエンナーレ2021」が開催される。新型コロナ対策を徹底して有客での開催を予定しており、映像を使って遠方にいても楽しめる試みも初めて行う。その撮影を担当しているが、思えば中之条ビエンナーレが初めて開催された2007年は、伊参スタジオ映画祭の会場でもある校舎の一室が、山重徹夫ディレクターをはじめとするスタッフの拠点だった。群馬に戻りまだ映像を仕事にできていなかった僕は、そこに飛び込んで「撮影させてください!」とむちゃなお願いをした。それまでアートとは何も接点がなかったが、面白いことが起きそうだという直感があった。

 「アーティストは少し先の未来を見ている。この町で創られたアートに触れることは、この町の未来を見ることでもある」と話したのは、当時の町長・入内島道隆さんだった。現代アートは、ただ美しい絵を描く・彫刻を作るというよりは、アーティストが社会や時代と対峙(たいじ)し表現されるものが多い。アートへの興味が深まることと並行し、アート周辺を映像で記録することが僕の仕事の多くを占めるようになっていった。

 アーツ前橋(前橋市)では、16年に始まった「表現の森」プロジェクトの一部に映像記録として参加。アーティストが市民と協働するこのプロジェクトで、神楽太鼓奏者の石坂亥士さんやダンサーの山賀ざくろさんと共に何度も高齢者施設を訪れた。普段は話し掛けても反応がないという寝たきりの女性が、亥士さんの太鼓の鼓動に合わせて体を揺らす。お年寄りのリアクションを見て、「こんな一面があったのかと気付かされた」と話すスタッフもいた。

 同市の南橘団地で子どもたちとワークショップを続けている中島佑太さんは、何かを完成させることを目的とせずに自由に発想させるという手法が独特。団地周辺を散策して拾ってきた木や花が材料になったり、作ったものを持ち寄って突然即興劇が始まったり。学校の授業では生まれないクリエーティブが連鎖的に起こる様は興味深い。

 19年に同美術館で行われた「表現の生態系」展では、県内のLGBTQ支援団体ハレルワのメンバーがアーティストらと共にレインボーパレードに参加する様子を撮影した。差別・信仰・風土など可視化しにくいものをアートという手段によって鮮やかに、深く、豊かに提示する画期的な展覧会だった。

 山重ディレクターは07年のインタビューで、「第1回は点、2回で線となり方向性が見えてきて、3回やれば面となり外からも見えるようになる」と話した。あれから14年がたち、中之条ビエンナーレは全国的に知られるイベントとなった。人々が苦境に立たされた時、アートは社会を映す鏡となる。その光と影を記録していきたい。



伊参スタジオ映画祭実行委員長 岡安賢一(中之条町西中之条)

 【略歴】2004年から伊参スタジオ映画祭に携わる。仕事として観光映像制作やアーツ前橋での映像制作を行う。日本映画学校映像ジャーナルコース卒。

2021/8/6掲載