神流町の持倉集落。7世帯8人全員が高齢者という

 7月10日の投開票に向け、県内各地をくまなく回る参院選候補者たちの足元で、日本が抱える最重要課題「人口減」が着々と進んでいる。縮小する社会の現状を「平成の大合併」がもたらしたものや産業構造の変化、子育て支援など五つの視点で捉え、現場から県民の声を届ける。

 「平成の大合併」により本県の市町村数は70から35に半減した。県内第1号となった「神流町」は2003年4月、万場町と中里村の合併によって誕生した。当時の人口は約3200人。人口減少が進む中、「地域の財産を後世に引き継ぎ、均衡の取れた自治体運営を目指す」という思いが込められていた。

 あれから20年。町恐竜センターの改修や体験型宿泊施設の整備といった、集客策を強化。医療センターを整備し、医療の充実も図ったが、現在の町の人口は1674人と合併時から半減した。義務教育終了後の進学先や就職先の業種が限られること、そして、公共交通の未発達が要因だと町はみている。

トレランで活性化

 町役場から車で約20分。町で最小の「持倉集落」は雄大な山々に囲まれた場所にある。標高千メートル。“天空の里”とも呼ばれるこの集落は現在7世帯8人、高齢者100%の限界集落だ。生まれ育った岩崎静男さん(87)は「手料理を皆で囲む行事がなくなった。子どもたちが元気に遊ぶ姿が見られなくなったことも寂しい」と嘆息する。

 コロナ禍以降は、人との交流も途絶えがちだった。そうした中で、地域活性化策の一筋の光となりそうなのが、11月に開催されるトレイルランニング大会「神流マウンテンラン&ウォーク」だ。

 大会は桐生市出身のプロトレイルランナー、鏑木毅さんが企画し、09年に始まった。参加者は前日から町に泊まり、地元住民のもてなしを受けながら、御荷鉾山系を中心に林道や登山道を駆け抜ける。過疎地域で開かれるトレランの中でも人気で、千人近くの愛好家が訪れる。

 19年の台風19号の影響などで中断していたが、4年ぶりの開催。感染対策のため、住民による飲食物の提供は控えられるが、ランナーと住民の交流の機会となることが期待される。何よりこの神流の魅力を感じてほしい。町はそう願う。

対照的な変貌

 高崎市は、合併によって旧町村の明暗が分かれた自治体の一つだ。06~09年にかけて、倉渕村、箕郷町、群馬町、新町、榛名町、吉井町が同市と合併した。

 旧群馬町地域は合併後、大型商業施設がオープン、周囲には戸建てが増加した。同市街地に加え、西毛広域幹線道路(西毛広幹道)の整備で前橋市内へのアクセスも良くなり、子育て世帯が住むのに便利な街へと変貌を遂げた。その結果、人口は合併した06年に比べて7千人ほど増え、22年6月現在、約4万3千人。高齢化率は24.5%で、高崎市全体の28.6%を下回る。

 対照的なのは、旧倉渕村地域だ。合併前に5千人近くいた人口は現在、3分の2に減少した。高齢化率は48.5%。農業を営む男性(66)は定年退職後、地元の倉渕に戻った。スムーズな道路の除雪や、住民サービスに合併の利点を感じることもあるが、「大都市の一員となることで、目の届かなくなる所もあると思う」と口にする。

 少子化も著しく、現在、倉渕全体の未就学児はわずか53人。集落によっては「子どもがいないので意味がない」と、地域の行事を取り止める例も出てきているという。

 「地域の現実をよく見てほしい」。政治に対し、こう訴える。