皆さんはどんな癖を持っていますか? 他の人に指摘されて初めて気付く、自分では無意識にしている言動が癖です。癖から性格が分かる、とも言われますから興味深いです。私は人と話す際、特に説明する場面や話に熱が入れば入るほど故郷・茨城の訛(なま)りが出てしまいます。群馬に移り住んで20年になりますが、いまだに茨城の言葉が私を支えているようで面白いなと思います。

 編み物にもさまざまな癖が出ます。編み地が固く、きっちり編む方。ゆったりと柔らかく編む方。いつもはきっちり編むのに、急ぐと緩くなる方。人の手がする仕事ですから、ロボットのように同じものが出来るわけではありません。そういった十人十色の作品が出来上がるのが手編みの面白さであり、魅力です。

 子どもの頃、左利きを右利きに矯正されたという方もいらっしゃるでしょう。編み物も癖を矯正する対処法があります。編み針の号数を変えたり、編み方のフォームを変えたりして、より良いものが出来上がるように工夫します。自分の癖を素直に受け入れ、認め、焦らず落ち着いて修正していくのです。すると、これまでにないほど素晴らしい作品が出来上がります。癖にも性格にも「素直であること」は、物事をスムーズに進めるために必要不可欠なのかもしれません。

 完成を楽しみにしながら編んでいる途中で、間違いを見つけてしまったとします。さて、どうしましょう。ある人はすぐに編み地をほどいて編み直します。潔いほどに何の躊躇(ちゅうちょ)もなく元の1本の糸に戻して編み直すのです。ある人はなかなか解くことができず悩みます。間違ったことは分かっているけれど、ここまで編んだ時間が無駄になってしまいそうでためらいます。正解はありません。自分の気持ちに素直に向き合って出した答えが正解です。解くことが難しい方には解かずにゴールできる対処法を提案します。それで納得して完成すれば良いのです。それが正解です。

 ただ、人間の面白さはここからです。一度は納得して完成させた作品なのに、しばらくしてもう一度解いて編み直す方がいます。他の人が見ても全く気付かないちょっとした間違い。誰に指摘されたわけでもないのに…。そう、自分だけが間違いを知っています。編み地は上手にごまかせても、自分自身をごまかすのは何とも気持ちの悪いものだと感じてしまうのです。そんな方は「ちょっと頑固だけどとても素直で真面目な性格」だと思いませんか。

 何かにつまずいた時、その向き合い方も人それぞれ癖があり、無意識に同じことを繰り返してしまうことがあるでしょう。癖と向き合い、自分自身と向き合うと、素直な本来の自分が見えてくるかもしれません。



ニット教室運営 新井ますみ(高崎市吉井町)

 【略歴】結婚を機に本県に移住。出産を経て、2017年にニット教室運営、ものづくり作家育成などを手掛ける会社「ルココン」を立ち上げた。茨城県出身。

2021/7/27掲載