動物園にはレクリエーション、調査・研究、教育、種の保存という四つの役割がある。誰にでも開かれた場所であり、誰もが来て楽しみ、学べる施設でなければならない。

 「ドリーム・ナイト・アット・ザ・ズー」という取り組みがある。障害のある子どもたちとその家族を招待し、気兼ねなく過ごしてもらうイベントだ。1996年、オランダのロッテルダム動物園ががんを患う子どもたちとその家族を招いたことをきっかけに、国際的に広がった。日本でも現在、20以上の動物園や水族館で行われている。

 私がその存在を知ったのは出身地、北九州市にある動物園、到津の森公園が行っていたからだ。ここでは、そのために職員やボランティアに研修もしていると聞き、非常に驚くとともに、ぜひ当園でも実施したいと考えた。

 実施を目指す上で、もっと自分にできることはないかと、以前から興味のあった手話を勉強してみたいと思うようになった。手話は言語として位置付けられている。通常の案内だけでなく、手話でも動物のことを伝えることができたら、喜んでもらえるのではないか、と思ったのだ。

 ただ、どうやって勉強したらいいのか悩んだ。教科書を読んで一人で学んでも続かないだろう。より実践的で、本当に意思疎通ができるようになりたいと思った。

 そんな時に出合ったのがオンラインで学習できる「みらいねっと手話教室」だった。代表で講師の大寺真弓さんは聴者だが、手話の魅力を伝えたいと普及事業に取り組んでいて、格好いいな、この人から学びたいなと思った。

 会話を学ぶだけでなく、おもてなしの力も備えるため「接客手話コンシェルジュ養成講座」を受講したらどうかと勧められ、昨年6月に勉強を始めた。続けられるか不安はあったが、1回2時間、計24回の講座を無事終えた。よく使う手話から始まり、接客に必要な言葉、動物の生態をより具体的に伝えることができる説明方法なども教えてもらった。

 1年かけて学び、接客手話コンシェルジュの資格試験に合格できた。合格できたことはもちろん、うれしかった。それ以上に、試験で聾(ろう)の方に動物解説をした際、その動物の特性がきちんと伝わり、興味を持っていろいろと質問していただけたことが本当にうれしかった。

 手話に関して私はまだまだ初心者だ。自ら進んで始めたことなので、これからも勉強を続けていきたい。

 今後、当園で「ドリーム・ナイト・アット・ザ・ズー」が実現したり、手話が必要な方が来園したりした時には率先して対応し、来園者が本当に知りたい動物のことをしっかり伝えていきたいと考えている。



群馬サファリ・ワールド獣医師 中川真梨子(富岡市南後箇)

 【略歴】(なかがわ・まりこ) 獣医師として九州のサファリパークに約4年勤務後、2015年7月、群馬サファリ・ワールド入社。動物の健康管理や治療を担う。北九州市出身。麻布大卒。
 2021/7/4掲載