対策を怠ると今世紀末に地球の平均気温は5度も上昇する。地球温暖化問題は人類の存亡に関わる最優先課題である。4月末、菅義偉首相は温室効果ガスの排出量について、2030年度時点で13年度に比べて46%削減する、という野心的な目標を掲げた。しかし、30年の電源構成を冷静に考えた場合、実現性には疑問もある。多くの先進国に倣い、もし日本も石炭火力など化石燃料発電の大幅削減に踏み切るのだとしたら、その減少分を補うため、驚異的なスピードで再生可能エネルギーを拡大させるか、原発を本気で推進するしかない。

 人類が電気の大量消費社会を今後も維持したいならば、今こそ地球上の一人一人が再エネの必要性を強く意識して世に訴えるべきである。年間を通じて日照に恵まれる本県は、太陽光発電量が国内上位であるが、風力発電は最下位に近い。自然エネルギーによる発電効率は設置条件に大きく影響を受けるため、その土地に適した発電方法を選択するのは当然だが、他に少しでも発電の余力がないか、多様な可能性を常に模索したい。

 今にわかに脚光を浴びているのは地熱発電だ。深い地中にあるマグマ由来の熱水蒸気を使ってタービンを回す本格的な発電である。地熱エネルギーの資源量は米国、インドネシアに次いで、日本は世界第3位と言われている。資源量で日本の6分の1にも満たないニュージーランドも今や地熱先進国である。しかし、わが国ではこれまで地熱発電がなかなか普及しなかった。

 その理由は、美しい自然と温泉文化を愛してやまない日本人の気質にある。国立公園内の地熱資源の開発は法律により規制された。さらに、地下掘削によって温泉水が将来枯渇するリスクを恐れた温泉業者と開発業者の激しい衝突がかつて各地で起こった。本県もその例外ではない。

 しかし4月末、小泉進次郎環境相は法律の運用見直しを表明し、新たな地熱開発を後押しする方針を打ち出した。いずれ国内のどこかで掘削調査を検討するのであれば、温泉水への影響評価の徹底した情報開示が欠かせない。還元井(かんげんせい)の水質対策にも手を打つべきだ。いずれにせよ、結論ありきの政策誘導はあってはならない。

 一方、温泉水との干渉リスクの低いバイナリー発電の恩恵を温泉街に還元するなど、共栄する地熱利用の選択肢を思い描くのもよい。地球温暖化の難題に取り組む人類の同志として、温泉業者と開発業者が胸襟を開いて、冷静かつ現実的な議論を重ねる機会を持つのは自然な流れである。

 上毛かるた「理想の電化に電源群馬」の札をエネルギーの地産地消の精神に読み替えて、もう一度見直してみるのはどうか。地球の営みにさおさして、人類に追い風をもたらしてほしいと願う世界80億人の共通の夢がそこにある。



群馬大教授 若井明彦 伊勢崎市上泉町

 【略歴】地盤災害のメカニズム解明と減災対策などを研究。2019年の台風災害では、富岡市の検証委員会委員長を務め、対応策を提案した。群馬大大学院修了。

2021/06/21掲載