5月初めにスペイン南部のコルドバを訪れました。この街の歴史地区はユネスコ世界遺産に登録されています。古代ローマ・イスラム・キリスト・ユダヤの宗教と文化が融合してできた街並みが素晴らしい場所です。街をのんびり散歩しながら遺跡や建築、背景にある歴史を探るのを楽しみにしていました。

 しかし、現地での実際の体験は楽しいというよりも、旅の仕方やマナーを再考させられるものになってしまいました。

 同じ時期にコルドバを旅していた友達と時々待ち合わせをして食事などを共にしましたが、基本的に1人旅で、名所を見ながらのんびりと雰囲気を楽しんでいました。しかし、歴史地区の小道を歩きながら、目に留まったものを眺めたり写真を撮ったりしていると、反対側から、あるいは後方からにぎやかな団体ツアーのグループが来て、囲まれてしまうということがよくありました。

 そのような観光客は、私がそこにいることや写真を撮っていることなどはお構いなしに、自分が撮りたい場所に立ち、撮影してまた次の場所に移動していくという様子でした。そのようなことを何度も体験していると、歴史に触れる散策の楽しさが台無しになっていきました。

 もしその人たちが1人、または少人数のグループで旅をしていたら同じような行動を取っていただろうか、と考えずにはいられませんでした。

 見どころで写真を撮りたいのは当然のことです。誰かが写真を撮っている場所の前を通らなければならない時、あるいは、自分もそこで撮りたい時には、まず先にいた人が撮り終わるまで待つというのは、私だけでなく、私が遭遇した他の多くの旅行者も守っているマナーです。そんな時にお互い目が合ってにっこりするということも、しばしばありました。

 ですから、団体での観光になるとそのマナーを忘れてしまうという残念なことが起こるのかな、と思わずにはいられませんでした。

 旅のマナーは普段の生活と同じだと考えています。旅行者だから、とりわけ大勢のグループだから普段の生活のマナーを外れてもいいというわけではないでしょう。

 ある国のある街が自分の旅先であったとしても、そこには住んでいる人たちがいます。歴史地区であってもそこを通勤路や通学路としている人がいて、そこで仕事をしている人もいます。もちろん他の旅行者もいます。自分が住む街に旅行者が来て、旅先だからといって大騒ぎしたり、交通ルールを無視したりするようなことがあったら腹が立つのも当然です。

 新型コロナが収束すれば、再び旅を楽しめるようになるでしょう。国内、国外を問わずマナーを守り、歓迎される旅行者でありたいものです。

 【略歴】ノキア在職時の2008年にフィンランドへ転勤。退職後はフリーランスで執筆、翻訳、SNSを通じてデジタルマーケティングなどに携わる。太田市出身。

2022/6/30掲載