人口が増える吉岡町の住宅街から前橋市総社地区方面を望む。建て替え中の保育園(右手前)は定員を増やすという

 県都の街が散逸している。住民基本台帳によると、前橋市中心部(本庁管内)の人口は10年間で7.1%減った。高齢の住民は生活の利便性が損なわれないか心配する。郊外では店舗が進出し、新しい道路が切り開かれ、住宅街が形成されていく。人口すなわち自治体の体力は全体として縮小するにもかかわらず、人々は自らの生活圏がさらに豊かになるよう開発を求めている。

 

独居高齢者

 「人がどんどんいなくなっちゃって」。中心部の岩神町で50年以上暮らす女性(90)は寂しそうだ。狭い家が多いといい、土地を確保しやすい郊外の方が「住みやすいはず」と理解を示す。わが子も郊外にいる。買い物や通院の助けは頼みにくいという。

 暮らしに必要な機能と住居を集中させる「コンパクトシティー」を掲げる政治家は多い。中心部の活性化とインフラの合理化、住民の利便性確保を果たせるというが、女性は周囲の状況から、絵空事だと思う。

 岩神町などを26年回る民生委員の女性(75)は「独居高齢者が昔の3倍くらい」と体感を語る。訪問先でよくあるのは移動手段の相談。前橋赤十字病院が朝日町から南の朝倉町へ移ったからだ。この女性の孫も郊外に住む。訪ねる時は市南端の新堀町の大型商業施設を通りがかり、他にない活気を感じるという。

 今年5月末時点の住民基本台帳を基に算出すると、10年前から人口が増えたのは市内16地区のうち総社(伸び率10.2%)、下川淵(8.1%)、永明(5.2%)、東(同)、元総社(1.6%)、城南(0.1%)の6地区だけだった。

再開発に期待

 不動産業の三幸(高崎市)の輿石将人社長(56)は、前橋市で中心部に住むことを検討する人が多くないことを認める。「商店街ににぎわいがない」。再開発も計画通りの効果を生むか、疑問を呈する。新築物件を探す人は土地が広く商業施設が増えている元総社地区や市外の吉岡町に視線が向くとした。

 一方、JR前橋駅南側の文京町の女性(80)は「一部だけでなく多くの人が潤うように」と、中心部の再開発に期待している。

 人が住むにはインフラが欠かせない。あちこちに造られる道路や公共施設の維持管理は、やがて市民の負担に返ることになる。

 建築や道路工事を請け負う小林工業(同市)の小林祐介社長(44)は、たとえコンパクトシティーが実現してもそれ同士をつなぐといった形で、新たな道路は必要になると指摘。建設業者には、頻発する災害時に迅速な復旧を推し進める体力も求められると話す。

 「ニーズは多様化している。必要な所に必要な物を造るのは、やはり大事だ」