このごろ電動自転車をよく見掛けます。力強くこいでいるようには見えないのですが、圧倒的な疾走感にびっくりすることもしばしばです。
スポーツバイクの世界でもこの電動モーター付き自転車が存在感を高めつつあります。実用性に優れた「ママチャリ」タイプとは異なり、見た目はロードバイクとほとんど同じ。軽量でバッテリー容量も大きく、100キロ以上もアシストを使って走れる物もあります。
この走行性能に優れた自転車をE-BIKE(E―バイク)といい、この分野の先進地ヨーロッパでは年間200万台以上も出荷されている今最も注目の車種です。坂も多く風も強い群馬県でもシックリきそうです。
そんなE―バイクに最近試乗する機会があり、短時間でしたが体感することができました。登坂性能はもちろんですが、信号待ちからのリスタート、自転車をスピードに乗せて安定させるまでの労力が全くと言っていいほどありません。
日本国内の規定として時速24キロがアシスト上限となるので、スピードに乗ってからは通常のロードバイクと同じです。「頑張る」というスポーツとしての領分は残しつつ、モーターのパワーがこれまでの行動範囲を超えたライドを可能にしてくれます。すっかり魅了されてしまいました。
自転車に乗れるようになった時、どこまでも行けるんだ! と感じて自分の可能性にときめいたと思います。大人になってからですから、喜びはひとしおです。
E―バイクは脚力に自信のない方や、車の免許返納を検討されている方にとっても素晴らしい選択だと思います。電動とはいえ、こがなければ進みませんから健康面を考えてもプラスです。強くこぐ必要はなく、膝を高く上げて動かし続けることで全身の血行を促進させます。本当の意味で長寿大国となるために脚を動かしていきましょう。
「マイペースに楽しむ」というのは簡単そうで、ことロードバイクの世界では難しいのです。1人でもベストの自分を追い求めてしまうし、仲間と走ればレベルに合わせることも大事です。起伏や風から予想以上に頑張らなければならない時間帯があると思います。
E―バイクはそんな予想外の労力を減らし、ライドのおいしいところだけをつまんで帰ってこられるのが素晴らしいです。余裕を持って走ることがマイペースにつながっていくと思うので、趣味として長く続けていくための良き相棒になるかもしれません。
イベントやレースでもE-BIKEのカテゴリーが設けられるなど(マウンテンバイクは世界選手権もあります)可能性は広がっています。合法かつ安全な「機材ドーピング」でいまだ見ぬ世界を体感するのは面白いですね。
群馬グリフィンレーシングチーム監督 渡辺将大 沼田市桜町
【略歴】前橋育英高で自転車ロードのナショナルチーム入り。中央大で学生ロードランキング1位。大学を中退して豪州留学。帰国後、サイクルショップタキザワ入社。
2021/02/19掲載