草津町のベルツこども園で保育士の話を聞く子どもたち。町は小中学校まで町立の1施設で、切れ目のない子育て支援をしている

 年間200万人以上の観光客が訪れる草津温泉(草津町)。他の自治体がうらやむほどの交流人口を誇る同町もまた、人口減少が進む。特に、女性1人が生涯に生む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は2020年の調査で0.99人に。県の1.39人を下回り、県内では下仁田町、上野村に続いて3番目に低い。

 草津町は就業者の半数が宿泊業・飲食サービス業に従事する。こうした業種は労働時間や休日が不規則で、子育てとの両立に苦労する人が多い。観光産業において「人」は資源。町は働きながら子育てできる環境の整備に力を入れる。

宿泊業の難しさ

 新型コロナウイルス下の県の観光支援事業が奏功し、温泉街は週末を中心に客足が戻ってきた。子どもの下校時間帯は、宿泊施設が忙しくなるタイミングでもある。

 「そろそろかな」。代々続く旅館で女将(おかみ)をしている40代女性は時計を確認した。子どもたちの夕食を作るため、午後6時には帰宅すると決めている。夕食を食べさせたら宿題を見て、寝かせる。自分の時間はないが、旅館を継ぐと決めた時から覚悟はあった。

 女性は「家族の理解があり、経営者の立場だから両立できる部分もある。そうでなければ難しいかもしれない。この業種は未婚の人も、結婚を機に辞めてしまう人も多いから」と声を落とす。

 宿泊業は派遣社員など非正規労働が多く、仕事を求めて転入してくる人も、出て行く人もいる。子どもの教育を理由に町外へ引っ越す家もある。観光地の活気とは裏腹に、定住人口はなかなか増えない。

 町はこうした事情を踏まえ、働く親が安心して子どもを預けられる学童保育を充実させ、高校生に年額4万円を支給する就学費補助制度を整備。本年度からは出産祝い金の支給も始めた。切れ目のない子育て支援で家庭を支える。

充実する給付金

 少子化が進む中、多くの自治体は子育て世帯への経済的支援を拡充する。高山村は出産時に20万~50万円の祝い金を贈ったり、おむつの購入費用を毎月補助したりしている。

 都内から同村へ昨年移住した山中麻葉(まは)さん(37)は生後10カ月の長女を育てている。自営業で夫と共働き。移住者ならではの悩みは、近所に身寄りがなく、子どもを気兼ねなく預けられる人がいないことだ。「経済的な支援はありがたいが、子育てを助けてくれる人手があればいいのに」と打ち明ける。

 孤立し、不安を抱える家庭も多い。政治に対しては「各家庭に手を差し伸べるような制度を。それが安心材料になる」と要望する。